パリからシャンパーニュに移動

初のパリ、朝イチバン

 早朝、外が白々と明けてくるのを待ち、一人でホテルの外へ。初めてのパリの街並みは、小躍りするほど美しい。いままでアジア・アメリカ圏にしか旅したことがなかったわたしにとって、はじめて触れるヨーロッパの文化は、何を目にしても新鮮。美しく並んだ白壁の建物。キャフェで朝食をとる初老のご夫婦。店のオープン時間に向けてせわしく準備をする店主。なにげない朝の風景なのでしょうが、その全てがなんともフランス初心者の気持ちを盛り上げてくれるんであります。はい。

 シャンゼリゼ通りをあちこち散策したあとは、いったんホテルに戻り、朝食。そして同行者と待ち合わせをしてタクシーで駅に。天井が高く開放的な構内では、多くのカフェが立ち並び、中央にはサラミやハムを吊り下げた屋台もある。そのサラミが放つ美味しそうな色気についつい駆け寄りたい衝動に駆られるけれど、まだまだ旅は始まったばかりゆえ、おとなしく我慢。軽く打ち合わせをするつもりで入った駅のカフェ。しかしながら10分経っても15分経っても誰の元にも一皿も届く気配が無い。
 日本人があまりにも気忙しいのか、これがフランスのペースなのか、それともこのカフェだけがそうなのか。「バッグだけは目を離しちゃだめよ」と同行者のアドバイスに従い黒い出張バッグを膝に抱えてさらに待つことしばし。やっと食べ物が運ばれてきたのは列車発車の数分前。「急いで。乗り遅れたら今日全部パーだよ」と急かされ全員が慌てて各自注文したクロックムッシュやらサラダやらを胃袋に押し込んで、7番ホームまで約200mの猛ダッシュ。少々、先が思いやられるわい。

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ジャン・ラルマン(シャンパーニュ)その2

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待ってました!至福の一杯

 日も暮れかけてきたので、ラルマンの家に戻り、いよいよ待望のシャンパンの試飲。まずは、スタンダードのものを。フルート型のシャンパングラスに注がれたワインは、輝きのある黄金色で細かい泡が流麗な線を描いてグラスの底から立ち上っていく。シャンパンに濃厚な果実味を与えるピノノワール種を80%と繊細な味わいのシャルドネ種が20%という割合で作ったこのシャンパンは、口にするとしっかりとした果実味とコクとが口のなかでゆっくりと広がっていく。現地で飲むシャンパンの、なんと美味しいこと。いや、正確には現地で飲むラルマンのシャンパンの、なんと美味しいこと。だって、1軒目で回ったドメーヌでは、プレステージのものであっても、こんなに美味しくは感じなかった。

さらに至福は続く

 次にグラスに注がれたのは、1998年のヴィンテージシャンパン。シャンパンには生産年をいれないのが通常だけれど、そのドメーヌで特に自信のあるものが出来た年には、その年の年号をいれる。レゼルブ・1998と書かれたビンから注がれたシャンパンは、先ほどのものより黄金色が強く輝きも増している。口にしたときの味わいは、より一層濃厚で果実味に富みまるでラルマンの性格をそのまま表現するかのようにたくましい。芳醇なシャンパンはかくも人間を幸せにしてくれるものだということが実感できた瞬間でした。

目のつけどころがイイのかしらん

 また、ラルマンは雑談のなかで、日本のワイン専門誌が取材にきて、近いうちに特集されることを披露してくれた。その専門誌はワイン愛好家に最も影響を与える雑誌のひとつ。そこが特集を組むほどのシャンパンだということは、わたしのワインを選ぶ目も捨てたもんじゃないなぁと、ひそかににんまり。ちなみにラルマンのシャンパンを日本で輸入している商社は1社だけで、ラルマンは今後取引先を増やすつもりもないし、そんな大量に作ることはしないという。

アッサンブラージュの魅力

 そのラルマンにシャンパンつくりで一番楽しい瞬間は?と聞いてみた。するとラルマンは、まるでその瞬間を思い出したかのようにふっと目を緩めて、アッサンブラージュするときだと言った。アッサンブラージュ。通常ワインはその年収穫したぶどうの果汁でワインを造るのだが、シャンパンはそのほかに、1年前、2年前ドメーヌによっては10年前に収穫した果汁をずっと保管しておいて、それらを合わせて造る。それはそのドメーヌ独自の味わいをキープするため。そしてその果汁を合わせる作業のことをアッサンブラージュというのです。なるほど。ラルマンにとってアッサンブラージュは、最高の食材を目のまえにした腕のよい料理人のような心境なんだろうなぁ。わかる気がする。

未来の巨匠・・・かも

 ところでラルマンの二人の子供のうち、前出の長男はそろそろ幼稚園にでも行こうかという年だったのですが、これがもう稀にみるやんちゃ坊主。片時もじっとしていることがなく取材中もずっとわたしたちに絡んでくる。ラルマンも手を焼いている様子だったけど、その坊やがわたしのことを気に入ってくれたのか、最後に自筆の絵をプレゼントしてくれた。この絵の題名は?と聞くと、太陽!なんだそう。できれば毎年このやんちゃ坊主の成長を見にきたいとおもいつつ、夕暮れと共にラルマンの家を後に、この日の宿泊先であるランス市内のホテルへと向かった。


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ジャンラルマン・キュヴェ・レゼルヴ1996(写真・上)

ジャンラルマン・キュヴェ・ブリュット (写真・下)

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シャンパーニュとボーヌの街

神々しい寺院へ

 早起きは3文の得。昨日、ランスの街を歩いていたときに遠くに見えた美しい寺院が気になったので、朝早く起きてひとり街にでた。ニュースでは今朝の気温は0℃といっていたけれど、ほんとーに寒い。空気がとても乾燥しているせいか寒さが肌をきるよう。一気に息を吸いこむと、肺のなかがヒリヒリして、この感じが京都の寒さと似ている。この旅の必需品であるビデオとデジカメをバッグから取り出し、街の風景をとる。

日頃の成果!?

 地図を持たず、昨日のおぼろげな勘を頼りに寺院にたどり着いたのはホテルから約7,8分後。ほとんど回り道をせずにこれたのは、日ごろの取材で培った方向感覚ゆえかもしれない。なんてったって国内の取材のときに生産者からファックスしてもらう現地の地図は、2時間以上かかる道をたった1本道でかかれていたり、おそろしく簡素化されているものが多く、ときには “陸橋を越えたら右、それから次の信号を越えて・・・”など地図ではなく箇条書きでのものもあり、実はかなり大変だったりするのです。

やっぱり行きつくところは食べ物

 パテドラルドノートルダム教会は、バロック調とゴシック調が融合した稀な寺院で、教会内のステンドグラスは、シャガールが手がけたのだという。荘厳で格調たかく美しかった。帰りに街角のパン屋でクロワッサンを購入し歩きながら食べた。皮がパリっとしていてバターが程よくきいていた。

世界の車窓から・・・ただしオンボロバン

 さて、今日はランスからボーヌに向かう。今回の取材はこれから向かうボーヌが拠点になるから、このおデブちゃんの荷を運ぶのもこの日から数日間は開放される。ランスをあとにして、南へ向かうこと約3時間。天候は曇り。霧が深い。車窓からは、霧の幕に覆われた草原が延々と続き、その広さに少々飽きたころに待ちに待ったぶどう畑が見え始めた。看板や案内図にはワインスクールで習った町名が北から順番に現れる。マルサネ、フィクサン、ジュブレシャンベルタン・・。地図でしか見たことのなかったブルゴーニュのぶどう畑が、目の前に整然と広がっている。毎晩わたしに至福を与えてくれるワイン達はここで生まれたのでありますね。ソムリエ試験を受ける前にここに来れていたら、さぞや受験も楽だったろうに。授業で道の両側に広がるぶどう畑は収穫を終え、葉は一部に緑を残しつつも黄金色に輝いている。まさにブルゴーニュはワインの町。

シュークルートうまかった!

 そうこうしているうちに、車は一軒のドメーヌに到着。このワイナリーはとても有名なドメーヌでそこのマダムは日本人。わたしたちはここでフランスの家庭料理をごちそうになる。酢キャベツとハムやソーセージを辛口のワインで煮込んだ“シュークルート”やキッシュロレーヌなどはどれも塩味が効いた、まさに現地の味。それからこのドメーヌのワインを何本かテイスティングさせてもらったのですが、このドメーヌで印象に残ったのは、何といってもマール・ド・ブルゴーニュ。ぶどうの絞りかすで作る蒸留酒なんですが、これが素晴らしくまろやかで余韻がひたすら長かった。


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ドメーヌ フィリップナデフ その1

ボンジュール!ナデフ

 ブルゴーニュの北に位置するフィサン村の一角に、フィリップ・ナデフの蔵がありました。門の前に車をとめると、待ち構えていたかのようにナデフ自ら門を開けてくれた。・・・といっても電動なのでボタン一つ押してくれただけではありますが。ナデフは、「セコムの食」ですでにご紹介しているドメーヌ。インポーター氏が前回の訪問時に撮った写真も掲載しているので、顔も知っていたはずなのに、写真で見るよりはずいぶんと穏やかそうな感じ。車から降り、ボンジュール!と挨拶を交わしたあとは、すぐ目の前にある蔵のなかへ。
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癒し香の元は新樽

 一昨年に立て替えたという蔵はまだ新しく整然としていた。そして蔵の中には癒し系の香りが一面に広がっている。その香りの元は、このドメーヌがこだわって使っている新樽が発しているもの。楓の木のとてもよい香りがいたします。ナデフが新樽にこだわる理由を聞いてみた。それは、新樽を使うことによりワインにバニラや焼いたアーモンドのニュアンスを与え、よりバランスの取れたワインを作りたいからなんだそう。
 ワイン醸造に使われる樽は、バニラの香りやナッツの香りを与えるために、バーナーで焦げるほどの焼き色をつけるのだが、ナデフの場合、樽の焼き具合は白ワイン用はややしっかりめ、赤ワインの樽はミディアムに焼きあげたものを使用している。
 ただ、新樽を使うということは、古樽を使うとき以上にワイン自体に樽の味わいを与えてしまうために、なかで熟成させるワイン、その元となるぶどうもしっかりと育てて力強いものでなければ新樽の強い香りに飲み込まれてしまうのではないか?と問うと、「全くそのとおり。そのために除草剤などは使用せずに健全なぶどうを育てるように心がけ、醸造の際にもじっくりと低温でぶどうの果実味を守りながら発酵させているんだ」という。
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土地の違いが味の違い

 ナデフの赤ワインのうち、マルサネはその果実味が最も表現されているように感じる。ぱんっとはじけるようなかわいらしい果実味が一口目から味わえる。ブルゴーニュの赤ワインを飲みなれていない人でも、その果実味に馴染んでもらえるのではないかと思う。一方、ジュブレシャンベルタンクラスになると、とてもパワフルなワインとなる。ぎゅっと凝縮した果実味がグラスのなかでガツンと音を立てているような印象。英雄ナポレオンは、どこにいくにもこのジュブレシャンベルタン村のワインを手放さなかったというけれど、わたしだって手放したくない。英雄が惚れる、まさに力強い味わい。
また、蔵の中で試飲した白ワインのサントネは、しっかりとした樽香を感じ、完熟した木成りのようなりと豊潤な果実味がとても印象的。酸味も充実していて口当たりのよいワイン。同行者一同、口々に美味いなぁとご満悦。

一級畑へいそいそと

 一通りの試飲が終わったところで、ぶどう畑に場所を移す。一番近くの畑でいいと遠慮して言ったのに、わざわざジュブレシャンベルタンの一級畑“カズティエ”に案内してくれるという。いい人だ。わたしたちのオンボロレンタカーにナデフも同乗し、10分ほど走った小高い丘の中腹に到着。
南向きの斜面は、粘土質に富み、霧雨のせいで湿った土に足を踏み入れると、この旅で一足しか持ってきていない靴に粘土質の土が、冗談でしょう?というほど絡みつく。大げさではなく数歩歩いただけで靴の高さが5cmほど上がるくらい。いやほんとに。ナデフいわく、この畑の特徴は水はけのよさ。粘土質に加えて大きな石が交じり合った土地であるために水はけがよく傾斜もかなりついていることから日光も十分に採れる。それにより凝縮したぶどうが実るのだそう。先ほど試飲した凝縮感は、この土ゆえなのであります。


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フィリップ ナデフ ジュブレィシャンベルタン ヴィエイユヴィーニュ2000
フィリップ ナデフ ジュブレィシャンベルタン プルミエクリュ カズティエ2000

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フィリップ ナデフ マルサネブラン2001

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ドメーヌ フィリップナデフ  その2

星付きと変わらぬ味わいの地元レストラン

 そして、今日はわざわざ日本から訪ねてきたわたしたちのために、この村で一番美味しいというレストランでランチをご馳走になることに。こぢんまりとして愛らしく、地元の人々に愛されている様子が伝わってくるお店の入り口には、今週のワイン、と書かれたところにナデフのワインが置いてある。お店の方のあたたかい気遣い。
店の一番奥にリザーブされた7席に各自座り、とても幸せなランチの始まり。ワインはナデフが持ち込んだ赤、白合わせて6本のワイン。そしてお料理はブルゴーニュならではの地方料理が次々に運ばれてくる。シャンボンペルシエ(豚のテリーヌ、ゼリー寄せ)に始まり、ウッフムレット(落とし卵の赤ワインソース)、鶉のロティ・フォアグラ詰め赤ワインソース、そして山ほどのチーズとほっぺたが落ちそうな甘いデザート。
 ナデフは、蔵でわたしたちが美味しいといった白ワインのサントネの1992年ヴィンテージを開けてくれた。熟成を重ねたサントネは、蔵で飲んだものよりもより一層とろりとしたうまみを蓄え円熟している。至福のときというのはこういう場合に使うのでありましょうな。
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ヴォギュエ仕込みの職人肌

 ランチでも、このときを逃さないぞとばかりに、いろんな質問を投げかけてみた。ナデフは、自分の蔵をを持つ前に、約5年間コント・ジョルジュ・ドゥ・ヴォギュエという有名なドメーヌで修行をしていた。ヴォギュエといえば、ワイン好きに高い評価を受けているドメーヌで、ワイン作りに対する姿勢も味わいもとても高い水準を誇っている蔵。ヴォギュエで働いている人たちは、みんな真面目で一切の手抜きをしない職人ばかりだったのだそうで、そこで修行できたことは、その後のナデフのワイン作りにおいて大きな財産となったと話す。
 ちなみに、修行先にヴォギュエを選んだ理由については、たまたま修行先を探しているところに、友人からヴォギュエが人を探しているらしいという話をきき、連絡をとって3ヵ月の試用期間を経たあとに、その仕事ぶりが評価され、正式に採用されたのだそう。ラッキーでしたね、というと、ほんとにラッキーだったよ、とにっこり笑ってくれた。

実直そのもののナデフ

 また、ぶどう作りにおいてどの作業が一番大変かと問うと、選定の作業だという。「なぜなら、ぶどうの木は一つとして同じものがないから。わたしは自然と共に働きたいと常日頃から考えている、これからもワインと共に生きていくよ」。そして「僕のワインについて何か思うことがあったら、いつでもなんなりと言ってほしい。それが僕に対する親切だ。」自然とワインを心から愛しているナデフのワインは、生命力あふれる実直な味わいなのであります。


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フィリップ ナデフ ジュブレィシャンベルタン ヴィエイユヴィーニュ2000
フィリップ ナデフ ジュブレィシャンベルタン プルミエクリュ カズティエ2000

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ドメーヌ シャンドン・ドゥ・ブリアイユ

だって貴族ですもん

 アポイントの時間より少々早く訪ねたのは、ドメーヌ・シャンドン・ドゥ・ブリアイユ。ここは、いままで巡ってきたドメーヌとは建物も雰囲気からして違う。何しろこのシャンドン家は、由緒ある貴族。その特徴ある蔵は、文化財に指定されているほど貴重な建物なんだそう。ちなみに、シャンパンの大手モエ・シャンドン(Moet & Chandone)のシャンドンは、その昔、このうちのお嬢さんがモエ家に嫁いだことから、名づけられたということです。
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飲み疲れないワイン

 約束の時間前の訪問にもかかわらず笑顔で迎えてくれたブリアイユは、スマートな紳士。背筋がピンと伸びていて品のよい笑顔からは余裕が感じられる。さて、じゃぁまずは蔵に行きましょうか、というブリアイユの言葉に連れられて低い梁をくぐって入ったのは、赤ワイン専用の蔵。蔵の中は湿気に富み横に長く古い樽が整然と並んでいる。シャンドンのワインは熟成に新樽を使わないスタイルだ。なぜなら、新樽を使ったり濃縮度を高めて作るワインは一口目のインパクトはあるけれど、ワインを飲んでいくと最後には疲れてしまうと思うんだ。それよりもわたしのワインは最後までエレガントな気疲れのしないワインを作りたい、赤いベリー系や土、スパイスなどの香りをぶどうから出来る限り引き出したいのだという。たしかに先ほどのナデフとは味わいが全く異なる。
 ワイン造りにおいて、樽を使うとか使わないとか、どれくらい熟成させるとかいうことは、その蔵の考え方でありそれを飲む人の嗜好ですもんね。日本酒だって、純米大吟醸や大吟醸や本醸造があって、飲む人の好みに合ったものが一番美味しいわけで、それらに優劣はない。ブリアイユがグラスに注いでくれたワインは、自身が説明するとおり赤・白ともに軽やかでふっくらとした繊細な味わい。酸味がとても美しく飲み疲れのしない味わい。いうなれば癒し系のワインなのであります。
 わたしは、連日仕事で疲れがたまったときに、よくこのワインを飲んでいます。

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シャンドン・ドゥ・ブリアイユ ペルナンベルドゥレス白2000
シャンドン・ドゥ・ブリアイユ コルトン白2000
シャンドン・ドゥ・ブリアイユ ペルナンベルドゥレス赤2000
シャンドン・ドゥ・ブリアイユ コルトン赤

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アンヌ・フランソワーズ・グロ

ブルゴーニュの名家“グロ家”へ

 本日は晴天なり。この日はまず、ボーヌにある宿泊先から約5,6分のところにあるドメーヌ、アンヌ・フランソワ・グロに向かいました。グロのエチケット(ラベル)に使用されている色と同じ、淡いオレンジを配したかわいらしいダイニングで待つことしばし、家の奥から現れたのは、長身の穏やかそうな感じの紳士。
このグロ家の説明を少しいたしますと、ブルゴーニュにおいてグロ家はとても有名なドメーヌで、そこで育った姉、兄、弟の3兄弟は今回訪れたアンヌ(姉)のほか、フレール(弟)、ミッシェル(兄)がそれぞれ独立してドメーヌを持っています。なかでもこのアンヌの蔵はグロ家の直系で、名門グロ家の味わいをそのまま引きついだワインを作っているのです。そして今、わたしたちの目の前に現れた紳士は、長女のフランソワの夫であり、フランソワーズ自身も、実家のあるポマール地区にワイナリーを持つドメーヌなのであります。
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クラシカル&デリケート

 ここのドメーヌのワインはクラシカル、いわゆる昔ながらの作り方で、ワインに果実の味わいをしっかりと与えつつも、しっかりと深みのあるワイン。違うドメーヌを同じ土俵には乗せられないことはよくわかっているけれど、一口目の味わいだけをみてみると、昨日取材したナデフとブリアイユのちょうど中間に位置するようなワインかもしれない。グロの蔵はとても天井が低く、無駄な装飾を排除した昔からのとてもシンプルな樽を使っているのが印象的だった。
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みんな自分の子供たち

 グロにお願いして、一番近くのぶどう畑に案内してもらった。グロの車は新車で乗り心地がよさそうだったが、そちらにはインポーター氏と通訳の女性1名が同乗し、わたしはいつものオンボロ車。グロの車についていきながら、昨日までの雨がまだ抜けきれてない畑に行く途中で、泥水がピカピカのグロの車を汚さないか、人ごとながら心配しておりました。グロの畑は、すぅーっとお腹いっぱい息を吸って伸びをしたくなるような、美しい景色の真中にあり、遠くには風車や美しい木々に囲まれたなかにある。今日がお天気でほんとに良かった。
自分が育ってきたポマールのぶどう畑、そして名門グロ家のブドウ畑、二つの蔵の異なるクラスの畑に携わってきたフランソワに聞いてみた。あなたが個人的に一番好きなぶどう畑はどこでしょう?すると、にこやかな笑みを浮かべながら「ワインは、私にとって我が子同然なんだ。どこの親でも自分の子供達を同じように大切にするように、どの畑が一番好きだということはないよ。
特級畑であろうと、カジュアルなワインの畑であろうと、その子らにはみんなそれぞれの個性があるし、その一番いいところを伸ばしてあげるのが、親である私の仕事だと思っているんだよ。」そう話すフランソワの表情は、この日一番穏やかで、そこにいた人たちをこの日の日差しのように温かい気持ちにさせてくれた。

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ある日のランチ(1)

 フランソワと別れてボーヌの中心街に向かったわたしたちは、12時を少しまわったあたりで、街のお惣菜屋さんに立ち寄った。ショーケースの中には、フランスの食卓に欠かせない細切り人参の酢漬けや、でーんと丸ごとおかれたチキンやほろほろ鶏、各種テリーヌ、パテ、牛肉の赤ワイン煮、コッコ・ヴァンなどが所狭しと並べられ、いかにも美味しそうな色彩を放っている。しかも格安。店の奥にあるイートインのテーブルをキープして、目を皿のようにしてケースの中を物色。
 ケースの前で約10分ほど延々と悩んだ末に、鴨のテリーヌとウサギの赤ワインソースに決定。食べ物をチョイスするときのわたしは、どうしてこんなに優柔不断なんだろうか。そして無事にコーディネーターを含む6名全員が注文を終え、しばし歓談や打ち合わせをして料理を待っていたのだが、待てども待てども一皿も出てこない。
 コーディネーター氏いわく、フランスは出てくるのが遅いんだそう。でもそれでも誰の前にもお皿が並ばず20分以上とは、せっかちな日本人にはもてあます時間。手持ち無沙汰でデジカメをいじり始めようかとしたところで、やっとこさの一皿目が登場。・・・したのはいいけれど、予想だにしなかったボリュームに一同びっくり。
 お皿の上にはテリーヌに添えて、大量の生野菜や付け合せのお惣菜が山盛りで運ばれてきた。時間がかかった理由はわかったし、とても丁寧な仕事ぶりなのもわかったけれど、どうやらフランス人の胃袋にはわたしは太刀打ちできないことも十分に理解した。メインのウサギをなんとか食べ終わったときには、かなりくたくたでございました。

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ドメーヌ・ベルトー

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まさに絵に書いたような職人登場

 10月20日午後。シャンボール・ ミュジニー地区を走る国道を逸れ、細い道を何度か折れた先に見えてきたのがドメーヌ・ベルトーの自宅兼ワイン蔵だ。オレンジにペインティングされた背の高い門扉をくぐると、見事なまでに育ったもみの樹がある。最初に姿を現したのは、御年70歳を越えるピエール・ベルトー。上背はなくやや前かがみでまったく笑顔を見せず視線はまっすぐ。眉間には深く刻まれた皺とぎゅっと結ばれた口元。しかしながら機嫌が悪いわけではなく、必要なことは早口でボソッとつぶやく、まさに絵に書いたような頑固職人だ。

笑顔で登場、フランソワ
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 早速、試飲をさせてもらうべく地下の蔵へと移動。蔵には多数の225リットル入りの木樽、そして大樽が二つ並んでいる。この言葉の通じない職人相手にどう取材をはじめようかと思っていたところに息子のフランソワ・ベルトーがやってきた。彼の方は、いたって物腰がやわらかく父と違って社交的だ。この蔵ではぶどうの栽培をフランソワが、醸造は7代目当主のピエールが中心に行なっている。肥料には魚糟や腐食土などを使用し、畑に必要以上の負担を与えないようにしているが、最近流行のビオディナミは、世間の風潮にのった俗っぽさを父が嫌うのだという。

ワインの哲学を問う
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 ピエールに自身の哲学を聞いてみた。「この繊細なぶどうが実る土地の個性を生かすために、タンニンが前面に出過ぎないように注意している。そのために新樽は使わず、果汁を搾るときは茎をすべて外して果実だけを使うんだ」。シャンボルミュジニーはピエール自身が優雅な女性をイメージして醸造したもので洗練された果実味を持ちそれでいて十分なコクがある。対して、ボンヌ・マールは筋骨隆々のパワフルな男性の印象。どこまでも力強く、早飲みするときにはデカンタに移して飲むほうが良く、長熟により本来兼ね備えた実力が発揮できるタイプ。そのボンヌ・マールのぶどう畑に案内してもらうことになり、ここで父・ベルトーとはお別れ。名残り惜しい。

贅沢ゆえに生まれる味わい

 畑はとても丁寧に手入れされている様子が伝わってくると同時に、積み残したぶどうがとても目に付く。聞くと、この蔵では収穫は一度だけで、そのときに熟してなかったぶどうはそのまま放っておくのだという。二度摘みをすると収穫量は増えるけど、一番摘みにこだわるがゆえに、生まれてくるコクを大切にしているのだ。贅沢すぎる味わいの秘密はここに残されたぶどうたちが雄弁に語っているようだ。

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ドメーヌ ベルトー シャンボールミュジニー2000
ドメーヌ ベルトー シャンボールミュジニー1級シャルム2000
ドメーヌ ベルトー特級 ボンヌ・マール2000

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シャヴィー・シュエ


犬と共にお出迎え

 10月22日早朝。秋の朝日を浴びて黄金色に輝くムルソー村の畑の一角。当主の名が刻まれた石門をくぐり、広い庭に車を停める。真新しい大きな破砕機の隙間から駆け寄ってきたのはシャヴィー・シュエ、ではなく愛犬の不細工な犬。あまりに不細工すぎて抱きしめたくなるほどかわいい。そして次に現れたのがシャヴィー・シュエ。シュエは一目で開放的な性格とわかるような良く動く大きな目と俊敏な動きで私達一同と握手を交わしたあと、「さぁ、じゃ、すぐに行こう!」と敷地内の蔵に案内してくれた。

右脳が納得!のワイン
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 段差の低い階段を下りていくと、大量の湿気が蔵の中を覆い、室温も高い。今年収穫したワインを樽の中で発酵させているからだ。樽に耳を近づけてみるとプツ、プツとワインの息吹が聞こえてくる。まずは発酵中のものを試飲させてもらった。ワインとジュースの中間のような、しかしながら力強い味わいだ。そして本番。見慣れたエチケット(ラベル)が貼られたビンから注がれたムルソー、さらにピュリニーモンラッシェ。しっかりと効いた樽、スパッとシャープな酸味、十分な果実味。左脳ではなく右脳が美味いというワインだ。

美味しいと言われるために作りつづける

私は冬号カタログを手渡して、通訳にシュエの紹介文を直訳してくれるようにお願いした。そのなかの一文で無名ながらも素晴らしい作り手という内容に対して、シュエがこう言った。「俺は有名になりたいんじゃない。自分が作ったワインを美味しいと飲んでもらえればそれでいい。シャルドネは白ブドウの王様だと思うし、特にこの土地(ムルソー)は世界一の白ワインを生み出すことができる地力がある。だからそれをきちんとワインに表現してあげるだけさ」いや、まったくそのとおり。

力強い土壌が生み出す真っ直ぐなワイン
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 それから徒歩にてシュエのムルソーの畑を取材。粘土質と石灰質が入り混じった畑。太陽の光を受け、黄金色に輝いているぶどうの葉に触れるシュエの姿からは、心からこの土地とワインを愛しているのが伝わってくる。裏表がない、シュエの性格そのままのまっすぐな味わいの白ワイン。少しでも多くの人に楽しんでもらいたい。

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シャヴィー・シュエ ブルゴーニュブラン2001
シャヴィー・シュエ ムルソー2001
シャヴィー・シュエ ピュリニーモンラッシェ2001

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ある日のランチ(2)

わたしたち以外全員・・・

 今日のお昼は、この旅のなかでもかなり楽しみにしていた駅前食堂の定食。間違ってもツーリストは立ち寄らない、いわゆる肉体労働者向けの店。わたしたち以外は全員、あきらかに肉体労働者。女性は基本的に来ない店らしい。当然目立つ。そのうえビデオを回し、日本語で喋っているからより一層目立つ。大丈夫、気にしない性格だし。
 各テーブルには無造作に赤ワインの入ったピッチャーと水が置かれている。グラスに注いで飲んでみるが、濃くて渋い南のワイン。昼間からこんなワインを飲んで彼らは仕事ができるのかと、ちらりと横目でオヤジたちをのぞき込むと、みんな水で半分くらいに薄めて飲んでいる。街角の食堂での流儀を一つ、学んだ。
 肝心のメニューは、生野菜たっぷりの前菜に、チキンのグリル。付け合せのホワイトソースで合えたパスタは大きな銀色のお皿に盛られたものがテーブルにデンと置かれ好きなだけ自分のお皿に取っていく。チキンとパスタ。動物性たんぱく質と炭水化物。まさに午後の労働のエネルギーになるものばかり。意外なほどによく切れる、使い込まれたナイフで一口大にチキンをカットし、食べる。華やかさはないけど、飽きない。長続きするお店の味だ。
 メインのあとに当然のようにテーブルに置かれたのはチーズ。そのあとにはデザート。街角食堂でもいわゆるフルコースがでてくるのだ。さすが、美食の国、フランス。思わぬところで異国の文化に感動してしまった。
 愉快なランチを終え10ユーロを支払い。次のアポイントまで30分。ここいらで運動不足を解消せねばと、しばしお散歩。冷やりと乾燥した風がダウンジャケットの上をなでていく。この旅で唯一、ボーっとできた時間だった。


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マルク・ジャンボン その1

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まさにコートドール!

 散策を終え車に戻り、ドメーヌ・マルク・ジャンボンに向かう。かなり急な坂道の上にあり、自宅と蔵は歩いて1分ほど離れている。ジャンボンの蔵からは、マコンのぶどう畑を一望でき、夕暮れともなると黄色く色づいたぶどうの葉がオレンジ色の陽の光を浴びて、幻想的な風景が臨める。
 1、2年前に出来たばかりという醸造所は、とても清潔でステンレスタンクがまだ新しい輝きを残している。この蔵は斜面を利用して半地下のような形に設計されているため、収穫時したぶどうをタンクの上に方に持ち上げて(ポンピング)する必要がなく、蔵の天井にあたる部分からタンクの中に流し込むことができる、このポンピングの作業はぶどうにとても大きなダメージを与えるといわれているため、そのストレスを与えないで醸造することができるのは、この蔵の大きなメリットだ。また、別の部屋には、白ワインを抱えた木樽が清潔なコンクリートの部屋のなかに横たわっていた。

行く、行く!もちろん行く!

 場所を変え、ジャンボンの自宅でのテイスティング。家も出来たててとりわけキッチンが美しい。愛らしいタイルや調度品がセンス良く並べられている。ぶどうの収穫時には、このキッチンで収穫を手伝ってくれる人たちに、連日美味しいお料理やワインを振舞っているのだという。来年、君たちもどうか?と誘われた。全員、来る気マンマン。
 ジャンボンは、その年のぶどうの個性を生かしたワインを目指している。その一つの手段として発酵には天然酵母を使用する。自分が手がけるワインは、若いうちに飲んでも熟成を経てからでも美味しくなければならないという。比較的カジュアルラインの白ワインには樹齢の若い木から取れたぶどうを80%、クラシックと呼ぶ、より繊細な味わいのワインには若木率を20%に落として複雑な味わいを与えるようにしている。


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ドメーヌ マルク・ジャンボン辛口2002
ドメーヌ マルク・ジャンボン遅摘み甘口2002

投稿者 news : 2005年02月15日 | フランスセコムの食取材日記 | コメント (0)

マルク・ジャンボンその2

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予想以上に美味

 そしてお待ちかねのテイスティング。ジャンボンのワインは、とろりとつやのある果実味と丸みを帯びた酸がピタリと融合した味わい。一口目のインパクトは穏やかなるものの、飲みすすむうちに芯に秘めた実力がゆっくりと開花していく。いつ飲んでも肩の凝らないワインというのは、このようなワインを指すのかもしれない。
 2002年はきりりとした酸が印象的だが、1999年はやや酸が控えめ。鶏のクリーム煮などには最適だよ、とジャンボン。次に、甘口のワインを試飲することとなる。なかでもシャンボンの貴腐ワインは、シャルドネ種を使って作る稀少なもので、非常にクリアでうっとりするほどの甘味を蓄えている。

ますますやる気マンマン!

 川のそばにある急な斜面にある畑は、ボトリティス菌がつきやすい環境だが、30度という傾斜は人が作業するにはあまりにも急な勾配だ。機械どころか人が手を加えることを嫌っているかのような畑での収穫は手馴れた人間でも通常の数倍の時間を費やしての作業となる。朝2時間、午後から2時間の作業を終えたあとは、足腰が立たなくなるほどの疲労に覆われるという。先ほど、収穫の手伝いに来るとはいったものの、そんな話を聞いてこの時点で“事前脱落”するものが出るかなと思いきや、全員、ますます来る気マンマン。さすが、全員もれなくワインをこよなく愛する面々なのであります。貴腐ワインを満喫した一同は、とろりとした気分に浸りながらジャンボンの家をあとにする。

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ドメーヌ マルク・ジャンボン辛口2002
ドメーヌ マルク・ジャンボン遅摘み甘口2002

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樽工場

樽工場

次の取材先は、ムルソーにある木樽のメーカー「ダミー」。事務所の奥から現われた、小柄で早口の青年はとても愛嬌のある笑顔。とても細かいところまで説明をしてくれた。まずは工場の外にでて、材料となる木材の説明を受ける。使用する木によっても、ワインに与える香りや酸化のすすみ方が違ってくる。新樽は1樽あたり約6万円ほどするため、決して安い買い物ではない。最近は一時期に比べてフランス国内での消費が減り、アメリカなどニューワールドと呼ばれる国からの注文が増えているんだという。工場の中に入る。

等間隔に切った板に輪をはめて、上部だけ固める。
次に、板を曲げて樽の形にするために下からバーナーで加熱する。
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上下に輪をはめて円筒状にしたら、再度バナーで加熱し樽のなかに焼き色をつける
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焼きあがった樽の内部。
この焼き方の濃淡で、ワインに与えるバニラ香などの印象ががらりと変わる。
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樽の上下に蓋をする。
熟練の職人にしか任せられない重要な作業だという。
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樽の中に少しの水を入れて、機械で回転させ漏れがないか厳重にチェックする。
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きれいな輪をかけて、ピカピカに磨き上げる。
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出発

さて、出発!

 朝おきて、さっとカーテンを開けると、カラリと清々しい秋晴れ。いつもより格段に手際よく身支度を整えたのち、気分上々にて一昨日来より準備を整えていたスーツケースの中身を再点検。この極度に重いスーツケースと共に向かうは品川駅。出張で使い慣れた駅ではあるものの、今朝はいままで一度も降りたことがないホームに向かい、えらく緊張した面持ちで列車の到着を待つ。そう、向かうのはいつもの羽田空港ではなく成田空港。定刻に到着した成田エクスプレスに乗り込み、ホッと一段落。何しろ今回の出張はフランスでございますから、わたくし、ことの他緊張しておりますんです。だって秋田行きの新幹線に乗ったつもりが、ふと行き先を見ると軽井沢行きだったり、小松空港行きのチケットを手配したつもりが、いつのまにか富山空港に変わっていたりするわたくしが、“セコムの食・初の海外取材”そして“人生初のヨーロッパ圏への旅”でございますので、その任務の重さとこれっぽっちもフランス語がしゃべれないというリスクをどのようにクリアしていこうかと、期待と不安でお腹はパンパン。一応成田空港で新品の手帳と「旅でつかうフランス語ガイド」を購入。そして、チェックイン…のはずが、10時25分だと思っていた出発時刻は、実は11時25分だった。こんな浮き足立った状況で、この旅を乗り切ることが出来るのか甚だ不安ではございますが、実りある取材になるように、わたくし全力でがんばってまいります。

はじめてみる円い虹

 機内。わたしのゾーンの担当は、スマートなフランス人の客室乗務員。しっかりと鍛えられた満面の笑みと過不足のないサービスのお陰で、とても心地よい空の旅になりそうな予感。離陸から数時間が経ち、食事を終えてゆったりした気分になった他の乗客は、徐々に眠りにつきはじめ、あたりを見回しても起きているのは、わたしだけ。すると客室乗務員がわたしのところにやってきて、例のスマートな笑顔で「ご覧になってください。」と窓の外を指で示す。わぁ~きれーい。右側の窓の奥にくっきりと現われていたのは“ブロッケンズサークル”と呼ばれる、見事な円形をした虹。アラスカ上空の薄く白い空のなかに、七色の光が鮮やかな弧を描いている。すると他の乗務員の方々も寄ってきて、みなさん口々に“初めて見た!すごいわねぇ”とおっしゃる。とても珍しい虹らしい。仕事で飛んでいる人でさえ初めてみるという虹を初のヨーロッパ出張で見れるなんて、ホントに幸先よろしいんだわ、この旅は。さて、それではソムリエでもあり、国際線勤務歴の長い友人の「時差ぼけしないコツ」に従って、これから先は“ひたすら飲んで寝る”ことにいたします。

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