中洞牧場のアイス<その1>
陸の孤島という言葉がありますね。
そう呼ばれるところは、本当に自然に満ち溢れていて、たとえば高知県の四万十、和歌山県の熊野、愛媛県の宇和島などを旅行すると、すっかり心が和みます。
でもね、これが休暇ではなく仕事、それも時間に追いたてられながらの取材となると、そりゃもう大変なことになるんです。
特にわたしの場合は、どんなに長い道のりであっても運転代わってくれる人はなく、道案内してくれるカーナビに話し掛けても返事もなく、そんな長い時間だと持っていったCDだってさすがに聞き飽きる。
高速道路なら、まだいいんです。
車のための道だから。
だけど県道や農道では、腰が曲がったおばあちゃんが平気で車道の真ん中あたりを歩いていたり、山道で「鹿の飛び出し注意」なんて標識のまわりは、ホントに飛び出してくるようなけもの道だったりする。
でもね、そんな僻地だからこそ美味しいが真っ直ぐに育まれることも多いんです。
33号で新商品として登場しているもののなかにも、陸の孤島産があるんでが、それがこれ!
取材前日、わたしは、親の仇のようにパソコンのキーボードを叩き続け、大急ぎで原稿を数本仕上げたあと、上司のヨシダさんに行き先を伝え、使い込んだキャリーバッグをガラガラと鳴らしながら東京駅に向かいました。
それから新幹線に揺られること約3時間。もちろん車内でも原稿作成は続き、旅の風情なんて、わたしには縁がない。
ところどころまだ雪が残る岩手は、春といえどもまだかなり寒く、身体が冷えないうちに改札から一直線にレンタカー会社に向かい、予約車をピックアップ。
辺りが暗くなるのとともに、気も急いてきて、慌てて目的地を入力すると、到着予定時刻のところには22時45分とある!
ふぅぅ、、、。結局片道8時間半ということね。思ったよりも遠そうだけど、よっしゃ、行くかぁ!と出発。
しかしそれからの長旅は、わたしがこれまで経験してきた陸の孤島の中でも、1、2を争う過酷なものでした。
延々に続く道は県道から町道に替わり、外灯もなく、今走っているところがリアス式海岸であることを実感させるに十分すぎるほどの極細クネクネ一車線。
さらに海からは車が浮いちゃうんじゃないかと思うほど強い風がビュービュー吹きつけ、そのうえ途中から雨ともミゾレともつかない大粒の滴が真横から降ってきた。
もうこの時間だと、会社に電話しても誰も出ないだろうな、寂しいけど、がんばろう。 外灯がないって、ほんと寂しい。長いなぁ、この道。
そんな状態が、数時間。
そしてなんとかその日の宿泊先にたどり着いて、取材本番の明日に備えて、バタンキュー。
で、翌日。
明るい太陽の下で見るホテル周辺の景色は、一面が草、草、草で遠くに海が見えるような、超牧歌的風景。
ホテルから車で数分のところにあるという、中洞牧場へは時間通りに到着したものの、そこには小さな工房があるだけで牛は1頭も見当たらない。
「あの、牛は?」
『あぁ、ここからもっと山奥に入ったところにいるんですよ。まずは、搾りたての牛乳を飲んでください』

もちろん遠慮なくいただくと、さらりとして作り込んだところが全くなくて、何にも染まってないような味。ん~、おいしぃ!(^.^)
それから牧場に行くことになり、かなり年季の入った軽4輪に乗車したはいいものの、途中からおそろしく急なあぜ道に突っ込み、昨日の雨でぬかるんだ道で車はスリップ。
やっと抜け出したかと思うと、次は大きな穴ぼこがあり、わたしの身体はその衝撃でシートから離れるほどジャンプ。昨日の1本道もつらかったけど、今日は今日でお尻が痛い。
しかしなぁ。どこまで進んでも雑木林だし一体どんなとこに牧場があるんだろうと、不安を隠しきれなくなったとき、やっと牧場に到着。ふぅぅ。
ん?でも目の前に広がるのは、だだっ広い山肌だけで牛なんて一頭もいない。
すると、中洞さん「あれ~?昨日はここにいたのになぁ」と少し慌て気味。
え?もしかして、だ、脱走?一頭もいないなんて、どういうこと?
こんなところまできて、牛に会えずに帰るなんて一体、何がおこったの?中洞さぁん!
・・・つづく。

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投稿者 news : 2007年02月28日 10:59 | 2006年セコムの食取材日記
