堅焼き煎餅とゴマたくさんな煎餅
晴れたり曇ったり、梅雨らしいちょっとムシムシした天気の朝、電車に乗って、下町のとある駅におりる。
短い商店街を抜け、『区内町御用達』というなかなかユニークな米屋の看板を過ぎ、住宅街のなかにポツンとある、小さなお煎餅屋さんに到着。
「こんにちは~」と引き戸を開け、店を横切り奥にある作業場にすすむと、『おや、久しぶりだね~』と職人さんが声をかけてくれた。

この日は、生地の仕込みがないので、湯気はあがってなかったけど、初めて取材に来た日には、大釜から大量の湯気と食欲をそそるに十分な炊きたてご飯の美味しい香りが、一気に押し寄せてきたんです。
そのご飯は、ほんとに美味しくて、ちょっと試食のつもりが、どんどんパクパクと食べて職人さんに笑われてしまったんですが、こんな美味しいお米ををそのまま食べずにお煎餅にしてしまおうという贅沢というか、ある意味大胆なその気合いに驚いちゃったんですよね。
煎餅職人の佐々木さんが使用している米は、有機栽培もしくは減農薬で栽培されたもの。
多くの煎餅屋さんは、生地を専門に作る会社から仕入れて、焼くだけだったりその生地に使う米も破砕してしまった米や古米などが使われるケースが多いというのにですよ、それを玄米で仕入れ、自家精米までやってのけるんだから、そのこだわりたるや、ただならぬものを感じました。
そして、作業場のなかにいる職人さんたちに声を掛けおわったころに佐々木さんが現れて、『いらっしゃい、すごい勇気だね。』と、にっこり。
これは、この時期に煎餅を焼くところを取材に来ることに対しての発言で、夏の作業場は、生地を乾燥させる機械やホイロなどから発せられる熱で、とてつもなく暑く、どんな過酷な炎天下であっても外の方が涼しいんだそう。
たしかに、人間がまともに歩いてられない暑さの38℃だとしても作業場は少なくとも45℃というんですからね、外の方が涼しいことに違いない。
でも職人さんたちが、我慢できなくて外で”涼”を取っていると、近所の人たちはその姿に、怪訝な視線を浴びせるそうです。(^^;
わたしもこの日、実際に火床の前に立ってみましたが、ものの1分もしないうちに、じわーっと顔から汗が。感覚的には、暑いというより、熱い!が近い。
これは、火床。熱さが伝わらないのが残念!
作業場には各所に扇風機があるけれど、送られてくる風も熱風。
韓国で体験した汗蒸幕(韓国式サウナ)もゼーハーいうほど熱かったけど、まさに、あのなかに入ったままで、煎餅を焼いているような感じだわね、これ。
だけど、職人さんたちはみな淡々と仕事を続けていて、その姿が粋なんです。お煎餅って、普通のひとには同じように見えるけど彼らにとっては作品。そしてその作品を口にしたとき、腕の高さが実感できるんでございますよね。

もちろん、焼きたてを食べさせてもらいましたよ。
あのね、堅いんだけどね、小さく割って口に入れると噛んでいるうちにご飯の香りが鼻腔を抜けて、口どけが抜群なの。
煎餅で口解け?って思うでしょ? 口解けなんです、いいんです。破砕米なんかじゃ、このキレのよさは出せないし、古米でも無理。
じっくり味わえば味わうほど、美味しさに気づく煎餅ってそうそう出会えませんよ。
ちなみにこちらが、焼きたての煎餅。
いまも、お土産にいただいた佐々木さんの煎餅を食べているんだけど、美味しいご飯の味がするの~。しあわせだわ~っ。 (*^.^*)
下町の「粋」を感じるお煎餅。ぜひ、食にうるさい方にも食べていただきたい一枚です。

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投稿者 news : 2006年03月10日 17:53 | 2005年セコムの食取材日記
