幻の塩数の子<その1>
今日の千歳に向かう便は、朝っぱらなのに、びっちり満席。少しウトウトしたくても、シート倒すのも後ろに気を使うし、パソコン使うにも、スペースが狭すぎてどうも調子が出ない。
なんやろなぁ、この混み方は、と思っていたら実は札幌雪祭り。とにかく凄い数の観光客で空港はごった返しておりました。
いいなぁ、みんな。楽しそうだなぁ。わたしなんか、一人ぼっちで仕事だぞぉ、、。それも、日帰りだぞぉ。そのうえ、外はビュンビュン吹雪いているし、傘は無し。
でも、実はぜーんぜん寂しくもなければ、どちらかというとかなりウキウキの取材でございましてですね。
なぜなら、今回の取材は2年越しで楽しみにしてきたんですから、一人だろうが、寒かろうが、転ぼうが何しようが、ぜーんぜん平気。
今日向かうのは、「セコムの食」でご紹介している「幻の塩数の子」を加工している工場。そして、そこで待ち受けているのは、わたしが北海道でとても頼りにしている生産者。通称・おっちゃん。本名・吉崎寿彦さん。
このおっちゃん、もうめっちゃくちゃ旨いものにウルサイ。だから、取材に行くとも~っ、その時期に美味しいものとか旨い店の話が途切れることなく、温泉の源泉のように湧き出てきて、2人して盛りあがるのなんの。
そしてその会話のなかから、「釣りたらこ&明太子」や「いくら醤油漬」などの商品が自然発生し、その流れの中で登場したのがこの塩数の子なんです。
数の子はニシンの卵ですが、市場の殆どのものが輸入物。海外で水揚げされたものは、腹から出さずにそのままにされたりすぐに取り出したとしても、日本に運ぶまで冷凍することを余儀なくされる。
そうすると、色が悪くなるため漂白剤を使用することになり薬液を落とすためさらにしつこく洗ってしまったあとは、着色料の出番。この時点ですでに数の子そのものの旨みなどはごっそりと抜け落ち残るのは、あの食感のみとなってしまうのです。
そして抜け落ちた味を補うために、これまたどっさりの味付け調味料を使用したあとは、何事もなかったかのようにお正月の重箱に楚々と収まっているのです。
わたしも、このおっちゃんに会うまでは、そんなもんなんだろうと思っておりました。なにしろ生まれ育った九州にはニシンなんて泳いでないですもん。
だけど、そんなわたしにおっちゃんは『ばーか、なんにも知らないんだから。まだまだだな。』と不敵な笑みを浮かべる。
『塩だけで、無添加の数の子欲しいなら、作ってやるよ』「おう。じゃぁ作ってくださいよ。」といって、作ってもらったのがこの塩数の子なんです。
毎年1月末から3月初旬にかけて行われるニシン漁。半世紀ほど前には大量だったニシンも、今ではホントに獲れなくなったとおっちゃんはいいます。
数年前、どか雪のなかおっちゃんと一緒に早朝訪ねた厚田漁港は、どこか物寂しげな雰囲気があり、他の港に比べて勢いに欠ける感じがしたけどそれでもこの厚田で獲れるニシンの卵は、おっちゃん曰く数の子にするには抜群の熟し方をしているんだそう。
さらに、ここの船は沖合い数百メートルのところで漁をしてあっという間に港に戻ってくるから、鮮度のよさは抜群。刺し網で取るから、魚体も痛まない。
取材のときちょうど港に戻ってきた船を除いたら、網に刺さったニシンが、かわいい目をウルウルさせていたっけな。水産加工に長年携わってきたこのおっちゃんがこだわるのは、鮮度!
この目をウルウルさせているニシンは、水揚げ後最短でおっちゃんの工場に運ばれ、採卵されニシンになるのでありますが、さて、わたしはどうしてこの出張を、心待ちにしていたのか?普通の工場取材なら、ここまで心躍ることもないはずなのに。
じつはその工場には、おっちゃんが不敵な笑みを浮かべるにふさわしい「ご褒美」が待っていたのです。
さて、それやいかに?

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・ 幻の塩数の子
投稿者 news : 2006年03月10日 10:29 | 2005年セコムの食取材日記
