パリからシャンパーニュに移動

初のパリ、朝イチバン

 早朝、外が白々と明けてくるのを待ち、一人でホテルの外へ。初めてのパリの街並みは、小躍りするほど美しい。いままでアジア・アメリカ圏にしか旅したことがなかったわたしにとって、はじめて触れるヨーロッパの文化は、何を目にしても新鮮。美しく並んだ白壁の建物。キャフェで朝食をとる初老のご夫婦。店のオープン時間に向けてせわしく準備をする店主。なにげない朝の風景なのでしょうが、その全てがなんともフランス初心者の気持ちを盛り上げてくれるんであります。はい。

 シャンゼリゼ通りをあちこち散策したあとは、いったんホテルに戻り、朝食。そして同行者と待ち合わせをしてタクシーで駅に。天井が高く開放的な構内では、多くのカフェが立ち並び、中央にはサラミやハムを吊り下げた屋台もある。そのサラミが放つ美味しそうな色気についつい駆け寄りたい衝動に駆られるけれど、まだまだ旅は始まったばかりゆえ、おとなしく我慢。軽く打ち合わせをするつもりで入った駅のカフェ。しかしながら10分経っても15分経っても誰の元にも一皿も届く気配が無い。
 日本人があまりにも気忙しいのか、これがフランスのペースなのか、それともこのカフェだけがそうなのか。「バッグだけは目を離しちゃだめよ」と同行者のアドバイスに従い黒い出張バッグを膝に抱えてさらに待つことしばし。やっと食べ物が運ばれてきたのは列車発車の数分前。「急いで。乗り遅れたら今日全部パーだよ」と急かされ全員が慌てて各自注文したクロックムッシュやらサラダやらを胃袋に押し込んで、7番ホームまで約200mの猛ダッシュ。少々、先が思いやられるわい。

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投稿者 news : 2005年02月15日 | フランスセコムの食取材日記 | コメント (0)

ジャン・ラルマン(シャンパーニュ)その2

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待ってました!至福の一杯

 日も暮れかけてきたので、ラルマンの家に戻り、いよいよ待望のシャンパンの試飲。まずは、スタンダードのものを。フルート型のシャンパングラスに注がれたワインは、輝きのある黄金色で細かい泡が流麗な線を描いてグラスの底から立ち上っていく。シャンパンに濃厚な果実味を与えるピノノワール種を80%と繊細な味わいのシャルドネ種が20%という割合で作ったこのシャンパンは、口にするとしっかりとした果実味とコクとが口のなかでゆっくりと広がっていく。現地で飲むシャンパンの、なんと美味しいこと。いや、正確には現地で飲むラルマンのシャンパンの、なんと美味しいこと。だって、1軒目で回ったドメーヌでは、プレステージのものであっても、こんなに美味しくは感じなかった。

さらに至福は続く

 次にグラスに注がれたのは、1998年のヴィンテージシャンパン。シャンパンには生産年をいれないのが通常だけれど、そのドメーヌで特に自信のあるものが出来た年には、その年の年号をいれる。レゼルブ・1998と書かれたビンから注がれたシャンパンは、先ほどのものより黄金色が強く輝きも増している。口にしたときの味わいは、より一層濃厚で果実味に富みまるでラルマンの性格をそのまま表現するかのようにたくましい。芳醇なシャンパンはかくも人間を幸せにしてくれるものだということが実感できた瞬間でした。

目のつけどころがイイのかしらん

 また、ラルマンは雑談のなかで、日本のワイン専門誌が取材にきて、近いうちに特集されることを披露してくれた。その専門誌はワイン愛好家に最も影響を与える雑誌のひとつ。そこが特集を組むほどのシャンパンだということは、わたしのワインを選ぶ目も捨てたもんじゃないなぁと、ひそかににんまり。ちなみにラルマンのシャンパンを日本で輸入している商社は1社だけで、ラルマンは今後取引先を増やすつもりもないし、そんな大量に作ることはしないという。

アッサンブラージュの魅力

 そのラルマンにシャンパンつくりで一番楽しい瞬間は?と聞いてみた。するとラルマンは、まるでその瞬間を思い出したかのようにふっと目を緩めて、アッサンブラージュするときだと言った。アッサンブラージュ。通常ワインはその年収穫したぶどうの果汁でワインを造るのだが、シャンパンはそのほかに、1年前、2年前ドメーヌによっては10年前に収穫した果汁をずっと保管しておいて、それらを合わせて造る。それはそのドメーヌ独自の味わいをキープするため。そしてその果汁を合わせる作業のことをアッサンブラージュというのです。なるほど。ラルマンにとってアッサンブラージュは、最高の食材を目のまえにした腕のよい料理人のような心境なんだろうなぁ。わかる気がする。

未来の巨匠・・・かも

 ところでラルマンの二人の子供のうち、前出の長男はそろそろ幼稚園にでも行こうかという年だったのですが、これがもう稀にみるやんちゃ坊主。片時もじっとしていることがなく取材中もずっとわたしたちに絡んでくる。ラルマンも手を焼いている様子だったけど、その坊やがわたしのことを気に入ってくれたのか、最後に自筆の絵をプレゼントしてくれた。この絵の題名は?と聞くと、太陽!なんだそう。できれば毎年このやんちゃ坊主の成長を見にきたいとおもいつつ、夕暮れと共にラルマンの家を後に、この日の宿泊先であるランス市内のホテルへと向かった。


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ジャンラルマン・キュヴェ・レゼルヴ1996(写真・上)

ジャンラルマン・キュヴェ・ブリュット (写真・下)

投稿者 news : 2005年02月15日 | フランスセコムの食取材日記 | コメント (0)

シャンパーニュとボーヌの街

神々しい寺院へ

 早起きは3文の得。昨日、ランスの街を歩いていたときに遠くに見えた美しい寺院が気になったので、朝早く起きてひとり街にでた。ニュースでは今朝の気温は0℃といっていたけれど、ほんとーに寒い。空気がとても乾燥しているせいか寒さが肌をきるよう。一気に息を吸いこむと、肺のなかがヒリヒリして、この感じが京都の寒さと似ている。この旅の必需品であるビデオとデジカメをバッグから取り出し、街の風景をとる。

日頃の成果!?

 地図を持たず、昨日のおぼろげな勘を頼りに寺院にたどり着いたのはホテルから約7,8分後。ほとんど回り道をせずにこれたのは、日ごろの取材で培った方向感覚ゆえかもしれない。なんてったって国内の取材のときに生産者からファックスしてもらう現地の地図は、2時間以上かかる道をたった1本道でかかれていたり、おそろしく簡素化されているものが多く、ときには “陸橋を越えたら右、それから次の信号を越えて・・・”など地図ではなく箇条書きでのものもあり、実はかなり大変だったりするのです。

やっぱり行きつくところは食べ物

 パテドラルドノートルダム教会は、バロック調とゴシック調が融合した稀な寺院で、教会内のステンドグラスは、シャガールが手がけたのだという。荘厳で格調たかく美しかった。帰りに街角のパン屋でクロワッサンを購入し歩きながら食べた。皮がパリっとしていてバターが程よくきいていた。

世界の車窓から・・・ただしオンボロバン

 さて、今日はランスからボーヌに向かう。今回の取材はこれから向かうボーヌが拠点になるから、このおデブちゃんの荷を運ぶのもこの日から数日間は開放される。ランスをあとにして、南へ向かうこと約3時間。天候は曇り。霧が深い。車窓からは、霧の幕に覆われた草原が延々と続き、その広さに少々飽きたころに待ちに待ったぶどう畑が見え始めた。看板や案内図にはワインスクールで習った町名が北から順番に現れる。マルサネ、フィクサン、ジュブレシャンベルタン・・。地図でしか見たことのなかったブルゴーニュのぶどう畑が、目の前に整然と広がっている。毎晩わたしに至福を与えてくれるワイン達はここで生まれたのでありますね。ソムリエ試験を受ける前にここに来れていたら、さぞや受験も楽だったろうに。授業で道の両側に広がるぶどう畑は収穫を終え、葉は一部に緑を残しつつも黄金色に輝いている。まさにブルゴーニュはワインの町。

シュークルートうまかった!

 そうこうしているうちに、車は一軒のドメーヌに到着。このワイナリーはとても有名なドメーヌでそこのマダムは日本人。わたしたちはここでフランスの家庭料理をごちそうになる。酢キャベツとハムやソーセージを辛口のワインで煮込んだ“シュークルート”やキッシュロレーヌなどはどれも塩味が効いた、まさに現地の味。それからこのドメーヌのワインを何本かテイスティングさせてもらったのですが、このドメーヌで印象に残ったのは、何といってもマール・ド・ブルゴーニュ。ぶどうの絞りかすで作る蒸留酒なんですが、これが素晴らしくまろやかで余韻がひたすら長かった。


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投稿者 news : 2005年02月15日 | フランスセコムの食取材日記 | コメント (0)

ドメーヌ フィリップナデフ その1

ボンジュール!ナデフ

 ブルゴーニュの北に位置するフィサン村の一角に、フィリップ・ナデフの蔵がありました。門の前に車をとめると、待ち構えていたかのようにナデフ自ら門を開けてくれた。・・・といっても電動なのでボタン一つ押してくれただけではありますが。ナデフは、「セコムの食」ですでにご紹介しているドメーヌ。インポーター氏が前回の訪問時に撮った写真も掲載しているので、顔も知っていたはずなのに、写真で見るよりはずいぶんと穏やかそうな感じ。車から降り、ボンジュール!と挨拶を交わしたあとは、すぐ目の前にある蔵のなかへ。
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癒し香の元は新樽

 一昨年に立て替えたという蔵はまだ新しく整然としていた。そして蔵の中には癒し系の香りが一面に広がっている。その香りの元は、このドメーヌがこだわって使っている新樽が発しているもの。楓の木のとてもよい香りがいたします。ナデフが新樽にこだわる理由を聞いてみた。それは、新樽を使うことによりワインにバニラや焼いたアーモンドのニュアンスを与え、よりバランスの取れたワインを作りたいからなんだそう。
 ワイン醸造に使われる樽は、バニラの香りやナッツの香りを与えるために、バーナーで焦げるほどの焼き色をつけるのだが、ナデフの場合、樽の焼き具合は白ワイン用はややしっかりめ、赤ワインの樽はミディアムに焼きあげたものを使用している。
 ただ、新樽を使うということは、古樽を使うとき以上にワイン自体に樽の味わいを与えてしまうために、なかで熟成させるワイン、その元となるぶどうもしっかりと育てて力強いものでなければ新樽の強い香りに飲み込まれてしまうのではないか?と問うと、「全くそのとおり。そのために除草剤などは使用せずに健全なぶどうを育てるように心がけ、醸造の際にもじっくりと低温でぶどうの果実味を守りながら発酵させているんだ」という。
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土地の違いが味の違い

 ナデフの赤ワインのうち、マルサネはその果実味が最も表現されているように感じる。ぱんっとはじけるようなかわいらしい果実味が一口目から味わえる。ブルゴーニュの赤ワインを飲みなれていない人でも、その果実味に馴染んでもらえるのではないかと思う。一方、ジュブレシャンベルタンクラスになると、とてもパワフルなワインとなる。ぎゅっと凝縮した果実味がグラスのなかでガツンと音を立てているような印象。英雄ナポレオンは、どこにいくにもこのジュブレシャンベルタン村のワインを手放さなかったというけれど、わたしだって手放したくない。英雄が惚れる、まさに力強い味わい。
また、蔵の中で試飲した白ワインのサントネは、しっかりとした樽香を感じ、完熟した木成りのようなりと豊潤な果実味がとても印象的。酸味も充実していて口当たりのよいワイン。同行者一同、口々に美味いなぁとご満悦。

一級畑へいそいそと

 一通りの試飲が終わったところで、ぶどう畑に場所を移す。一番近くの畑でいいと遠慮して言ったのに、わざわざジュブレシャンベルタンの一級畑“カズティエ”に案内してくれるという。いい人だ。わたしたちのオンボロレンタカーにナデフも同乗し、10分ほど走った小高い丘の中腹に到着。
南向きの斜面は、粘土質に富み、霧雨のせいで湿った土に足を踏み入れると、この旅で一足しか持ってきていない靴に粘土質の土が、冗談でしょう?というほど絡みつく。大げさではなく数歩歩いただけで靴の高さが5cmほど上がるくらい。いやほんとに。ナデフいわく、この畑の特徴は水はけのよさ。粘土質に加えて大きな石が交じり合った土地であるために水はけがよく傾斜もかなりついていることから日光も十分に採れる。それにより凝縮したぶどうが実るのだそう。先ほど試飲した凝縮感は、この土ゆえなのであります。


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フィリップ ナデフ ジュブレィシャンベルタン ヴィエイユヴィーニュ2000
フィリップ ナデフ ジュブレィシャンベルタン プルミエクリュ カズティエ2000

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フィリップ ナデフ マルサネブラン2001

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ドメーヌ フィリップナデフ  その2

星付きと変わらぬ味わいの地元レストラン

 そして、今日はわざわざ日本から訪ねてきたわたしたちのために、この村で一番美味しいというレストランでランチをご馳走になることに。こぢんまりとして愛らしく、地元の人々に愛されている様子が伝わってくるお店の入り口には、今週のワイン、と書かれたところにナデフのワインが置いてある。お店の方のあたたかい気遣い。
店の一番奥にリザーブされた7席に各自座り、とても幸せなランチの始まり。ワインはナデフが持ち込んだ赤、白合わせて6本のワイン。そしてお料理はブルゴーニュならではの地方料理が次々に運ばれてくる。シャンボンペルシエ(豚のテリーヌ、ゼリー寄せ)に始まり、ウッフムレット(落とし卵の赤ワインソース)、鶉のロティ・フォアグラ詰め赤ワインソース、そして山ほどのチーズとほっぺたが落ちそうな甘いデザート。
 ナデフは、蔵でわたしたちが美味しいといった白ワインのサントネの1992年ヴィンテージを開けてくれた。熟成を重ねたサントネは、蔵で飲んだものよりもより一層とろりとしたうまみを蓄え円熟している。至福のときというのはこういう場合に使うのでありましょうな。
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ヴォギュエ仕込みの職人肌

 ランチでも、このときを逃さないぞとばかりに、いろんな質問を投げかけてみた。ナデフは、自分の蔵をを持つ前に、約5年間コント・ジョルジュ・ドゥ・ヴォギュエという有名なドメーヌで修行をしていた。ヴォギュエといえば、ワイン好きに高い評価を受けているドメーヌで、ワイン作りに対する姿勢も味わいもとても高い水準を誇っている蔵。ヴォギュエで働いている人たちは、みんな真面目で一切の手抜きをしない職人ばかりだったのだそうで、そこで修行できたことは、その後のナデフのワイン作りにおいて大きな財産となったと話す。
 ちなみに、修行先にヴォギュエを選んだ理由については、たまたま修行先を探しているところに、友人からヴォギュエが人を探しているらしいという話をきき、連絡をとって3ヵ月の試用期間を経たあとに、その仕事ぶりが評価され、正式に採用されたのだそう。ラッキーでしたね、というと、ほんとにラッキーだったよ、とにっこり笑ってくれた。

実直そのもののナデフ

 また、ぶどう作りにおいてどの作業が一番大変かと問うと、選定の作業だという。「なぜなら、ぶどうの木は一つとして同じものがないから。わたしは自然と共に働きたいと常日頃から考えている、これからもワインと共に生きていくよ」。そして「僕のワインについて何か思うことがあったら、いつでもなんなりと言ってほしい。それが僕に対する親切だ。」自然とワインを心から愛しているナデフのワインは、生命力あふれる実直な味わいなのであります。


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カンコロ餅<その1>

p_kankoromochi_01_03.jpgホックリと甘くてやわらかくて、田舎っぽい素朴な味わい。強烈なインパクトはないんだけど、ひと口食べたら、思わずふた口めも食べちゃって、気づいたら、なにげに何個も食べちゃってた。そんな癒し系の味で大好評なのが、このかんころ餅。オーブントースターやコンロ、ストーブなんかで少し焼き目をつけて食べると、もち米とさつま芋の甘さが口の中で交じり合って、程よい甘み。面白いことに、甘い物にあまり興味がない男性なんかにもやたらと評判がよいのです。 飾りたてた味ではないところがいいのかな。

かんころ餅は、長崎県五島列島に伝わる伝統的なお餅(和菓子)ですが、「セコムの食」でご紹介しているかんころ餅は、無農薬無化学肥料で栽培した五島列島産のさつま芋と、とても評価の高いもち米である佐賀県産の「ひよくもち」を使って、五島列島の伝統的な製法を忠実に表現したもの。しかしながら、とても素朴な味わいに反して(?)、かんころ餅の取材はとーっても波乱万丈でございました。

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晩秋の良く晴れた、長崎県佐世保港。早朝。「セコムの食」こだわり倶楽部の取材のために、港に集まったのはかんころ餅を作っている和菓子屋の2代目・高木さんと、特集記事のディレクターとカメラマン、そしてわたしの4名。そして人数分のチケットを購入して、乗り込んだのは上五島ゆきの高速船。今日は、かんころ餅の原材料であるさつま芋の生産者に取材するのが目的で、ホントに晴れていて良かったとひと安心。現地に到着するには1時間半以上かかるので、菓子職人の高木さんに船の中で、かんころ餅に対する思いなどをお聞かせ願おうと。お聞かせ願おうとぉぉぉ。お、お、お~っ。ふねが~。ありゃ~ゆれるぅぅ~ぐっ。たしかにねぇ、こんな波の中で泳いでいる魚は美味しいわけよねぇ、だから五島列島の逸品の一夜干しも旨いのか…などと余計なことは思い浮かぶものの、取材で話を聞くなんてことはおろかまっすぐ座ってられないほど、身体が上下左右にバッサンバッサン揺れてあっちにガッチャン、ゴットン、ドッシャンと、笑顔も作れないほど尋常じゃない横揺れと、子供の頃に遊んだエアートランポリンに近い縦揺れ。

死ぬ気で1時間ほど頑張ったものの、これ以上は心身ともに危険と判断し、とうとう、その場を逃げ出すように席を離れ空いた席に移動して、バタン。ディレクターもカメラマンも顔色不良で、こてんぱんな様子。それでもなんとか島に辿り着き、肩で息をしながらも、佐世保の港に置き忘れてきた笑顔を慌てて取り戻し、出迎えに来てくれた五島列島の役場の職員さんたちにやや引きつりながらも、ご挨拶。どうなることやら、心配だわ、今回の取材。とにかく早く復活せねば~。
つづき。
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投稿者 news : 2005年02月15日 | 2004年セコムの食取材日記 | コメント (0)

ドメーヌ シャンドン・ドゥ・ブリアイユ

だって貴族ですもん

 アポイントの時間より少々早く訪ねたのは、ドメーヌ・シャンドン・ドゥ・ブリアイユ。ここは、いままで巡ってきたドメーヌとは建物も雰囲気からして違う。何しろこのシャンドン家は、由緒ある貴族。その特徴ある蔵は、文化財に指定されているほど貴重な建物なんだそう。ちなみに、シャンパンの大手モエ・シャンドン(Moet & Chandone)のシャンドンは、その昔、このうちのお嬢さんがモエ家に嫁いだことから、名づけられたということです。
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飲み疲れないワイン

 約束の時間前の訪問にもかかわらず笑顔で迎えてくれたブリアイユは、スマートな紳士。背筋がピンと伸びていて品のよい笑顔からは余裕が感じられる。さて、じゃぁまずは蔵に行きましょうか、というブリアイユの言葉に連れられて低い梁をくぐって入ったのは、赤ワイン専用の蔵。蔵の中は湿気に富み横に長く古い樽が整然と並んでいる。シャンドンのワインは熟成に新樽を使わないスタイルだ。なぜなら、新樽を使ったり濃縮度を高めて作るワインは一口目のインパクトはあるけれど、ワインを飲んでいくと最後には疲れてしまうと思うんだ。それよりもわたしのワインは最後までエレガントな気疲れのしないワインを作りたい、赤いベリー系や土、スパイスなどの香りをぶどうから出来る限り引き出したいのだという。たしかに先ほどのナデフとは味わいが全く異なる。
 ワイン造りにおいて、樽を使うとか使わないとか、どれくらい熟成させるとかいうことは、その蔵の考え方でありそれを飲む人の嗜好ですもんね。日本酒だって、純米大吟醸や大吟醸や本醸造があって、飲む人の好みに合ったものが一番美味しいわけで、それらに優劣はない。ブリアイユがグラスに注いでくれたワインは、自身が説明するとおり赤・白ともに軽やかでふっくらとした繊細な味わい。酸味がとても美しく飲み疲れのしない味わい。いうなれば癒し系のワインなのであります。
 わたしは、連日仕事で疲れがたまったときに、よくこのワインを飲んでいます。

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シャンドン・ドゥ・ブリアイユ ペルナンベルドゥレス白2000
シャンドン・ドゥ・ブリアイユ コルトン白2000
シャンドン・ドゥ・ブリアイユ ペルナンベルドゥレス赤2000
シャンドン・ドゥ・ブリアイユ コルトン赤

投稿者 news : 2005年02月15日 | フランスセコムの食取材日記 | コメント (0)

カンコロ餅<その2>

長崎県、五島列島に向かう高速船のなかは、まさにエアートランポリン状態!わたしたち取材スタッフは、ゲゲゲの鬼太郎に出てくる「いったんもめん」のようにペランペランな状況に陥りながらも、なんとか上五島に到着。出迎えてくれた町役場と農協の方にご挨拶し、早速、かんころ餅の原料であるさつま芋を栽培している古川さんご夫妻の待つ畑に向かいました。

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上五島は、隠れキリシタンが数多く移り住んだという島で、小さな島ながら29ケ所ものカトリック教会があり、どこか異国情緒というか哀愁というか、独特の風が流れています。古川さんご夫妻の畑は山の中腹の、海に向かってかなり急な斜面にありました。お二人とも70歳を超えているのにまだまだ足腰はしっかりと力強く毎日農作業をしていらっしゃる。畑の中には、収穫を待つさつま芋が、ウネに沿って埋まっていて、古川さんはクワで器用にそれらを掘り起こし、紫色の皮は傷もなくきれい。さすがやなぁ、と感心していると『あんたも掘ってみんしゃい』とお誘いの声が。『ひゃぁ、いいんですか?』といいながら調子に乗って、クワを持たせてもらい土を掘り返そうと振り上げた途端に、足元フラフラで思わず尻もち。やっと掘り出した芋は、クワで傷だらけで、中には折れちゃったものも。そのうえ、タチの悪いヤブ蚊に刺され、目と目の間がブチッと腫れみんなに大笑いされる始末。うぅぅ情けなかよ~。芋畑で格闘し、古川さんの自宅で農家としての苦労などを取材したあとは、古川さんと同じように無農薬・無化学肥料でさつま芋を栽培している農家さん数軒を訪ね、この日は一旦、宿泊先へ。

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翌日。AM4:30。
国民宿舎の、かなり硬めのカンパンのようなベッドから飛び起き、再び古川さんの元へ向かおうと外に出ると、とてつもなく冷たい海風から両頬をバッシンバッシンと殴られ、そうか、ここは四方を海で囲まれた、小さな島なんだとあらためて実感。しかし、まだ秋だというのに、この冷たさのなかで作業をするのは大変だろうなぁ。車を飛ばして、現地に着くとすでに古川さん夫妻が準備万端で待っていてくれました。かんころ餅には、さつま芋は欠かせない材料なのですが、作る際には生のさつま芋ではなくて、茹でてカラカラに干した芋を使うんです。そして茹で干しした芋は、天日で干すことで旨みが凝縮するため少しでも長く天日にあてられるよう、夜も明けぬ早朝から茹で干しの作業が行なわれるというわけです。(「かんころ」とは、この地方の方言で、茹で干しという意味です)まずは、生のさつま芋の皮をきれいに剥き、約1cm程の輪切りにして、それを、茹で干しするために用意された、庭先の大釜で茹で上げ、すぐに軒先の干し棚にざっくりと並べ、重ならないように丁寧に広げていくんです。しかし実際にやってみると、いやぁ大変っす。主婦の方ならご存知でしょうが生のさつま芋は、輪切りにするだけでもすごい力が要るし、海から吹き上げる氷のような冷たい風のなか、一枚一枚芋を広げていく作業は、並々ならぬ体力と気力が必要。もうすぐ80歳になろうかという、このご夫婦の地道な苦労を取材させていただいて、あたしゃまだまだ努力が足りんと、反省いたしました。

美味しいものに出会ったときは、その美味が生まれるまでの苦労まで、一緒に味わうつもりでいただきたいですね。
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アンヌ・フランソワーズ・グロ

ブルゴーニュの名家“グロ家”へ

 本日は晴天なり。この日はまず、ボーヌにある宿泊先から約5,6分のところにあるドメーヌ、アンヌ・フランソワ・グロに向かいました。グロのエチケット(ラベル)に使用されている色と同じ、淡いオレンジを配したかわいらしいダイニングで待つことしばし、家の奥から現れたのは、長身の穏やかそうな感じの紳士。
このグロ家の説明を少しいたしますと、ブルゴーニュにおいてグロ家はとても有名なドメーヌで、そこで育った姉、兄、弟の3兄弟は今回訪れたアンヌ(姉)のほか、フレール(弟)、ミッシェル(兄)がそれぞれ独立してドメーヌを持っています。なかでもこのアンヌの蔵はグロ家の直系で、名門グロ家の味わいをそのまま引きついだワインを作っているのです。そして今、わたしたちの目の前に現れた紳士は、長女のフランソワの夫であり、フランソワーズ自身も、実家のあるポマール地区にワイナリーを持つドメーヌなのであります。
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クラシカル&デリケート

 ここのドメーヌのワインはクラシカル、いわゆる昔ながらの作り方で、ワインに果実の味わいをしっかりと与えつつも、しっかりと深みのあるワイン。違うドメーヌを同じ土俵には乗せられないことはよくわかっているけれど、一口目の味わいだけをみてみると、昨日取材したナデフとブリアイユのちょうど中間に位置するようなワインかもしれない。グロの蔵はとても天井が低く、無駄な装飾を排除した昔からのとてもシンプルな樽を使っているのが印象的だった。
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みんな自分の子供たち

 グロにお願いして、一番近くのぶどう畑に案内してもらった。グロの車は新車で乗り心地がよさそうだったが、そちらにはインポーター氏と通訳の女性1名が同乗し、わたしはいつものオンボロ車。グロの車についていきながら、昨日までの雨がまだ抜けきれてない畑に行く途中で、泥水がピカピカのグロの車を汚さないか、人ごとながら心配しておりました。グロの畑は、すぅーっとお腹いっぱい息を吸って伸びをしたくなるような、美しい景色の真中にあり、遠くには風車や美しい木々に囲まれたなかにある。今日がお天気でほんとに良かった。
自分が育ってきたポマールのぶどう畑、そして名門グロ家のブドウ畑、二つの蔵の異なるクラスの畑に携わってきたフランソワに聞いてみた。あなたが個人的に一番好きなぶどう畑はどこでしょう?すると、にこやかな笑みを浮かべながら「ワインは、私にとって我が子同然なんだ。どこの親でも自分の子供達を同じように大切にするように、どの畑が一番好きだということはないよ。
特級畑であろうと、カジュアルなワインの畑であろうと、その子らにはみんなそれぞれの個性があるし、その一番いいところを伸ばしてあげるのが、親である私の仕事だと思っているんだよ。」そう話すフランソワの表情は、この日一番穏やかで、そこにいた人たちをこの日の日差しのように温かい気持ちにさせてくれた。

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高木さんのコシヒカリ<その1>

わたしの携帯に定期的に届く、実家からの請求メール。『米がなくなります。至急送ってください』わたしは「セコムの食」のカタログを実家にも送っていて家族が食べたいというものを、折をみては贈っているんです。特に、毎日食べるお米に関しては、娘としても美味しいものを食べて欲しいですから、米びつが空になる前に連絡をくれるようにと伝えてあるんです。それで、先日もお米を申し込んだのですが、すると珍しいことに福岡の母から電話が入りました。『あ、ゆみ?今度の米は、美味しいねぇ~。美味しいばい』とえらい勢いで、褒め言葉を連発している。 私 『そうね。よかったよかった。今度の米は、富山のコシヒカリよ。気に入ったんならよかった』
母 『甘いとよね、ご飯が』
私 『でも前のお米も美味しかったろも?』
母 『うん、いつも美味しいばい。でも今度のはいつもよりか美味しい!』
私 『そんなに美味しいって、ちなみにどんな風に美味しいと思うん?』
母 『どうって言われても、わからんばってん、とにかく甘いと。ご飯が。好きばい』
私 『わかったわかった。また送るけん、なくなったら連絡して』
母 『そうね、ありがとね。でも、この前お願いした長崎ちゃんぽんはまだ届かんばい』
私 『へ?だってこの前、届いたって言いよったやん』
母 『あ、1回目は届いたばい。美味しかったよ。でも、2回目がまだ来んとよね。待っとるけん』
私 『・・・はぁ。』
母 『それから、お母さんが柿が好物なの、知っとるやろ?あんぽ柿は美味しいと?』
私 『当たり前やん。めちゃくちゃ評判いいけど、それって送れってこと?』
母 『お母さん、柿は好きなんよねぇ。あんた知っとるやろ。お母さんの好物』
私 『あー、もうわかったよ。そのうち送るから。じゃぁね、もう切るよ。』
まぁ、母の語彙の少なさと厚かましさはいつものこととしても、今度のお米が相当気に入ったことは十分伝わってきて、贈り主としては嬉しい限り。わたしたちスタッフは「セコムの食」でご紹介するお米を探すために相当数のお米を試食してきましたが、この高木さんのコシヒカリは確かに、カタログに掲載しているお米のなかでも甘みが秀でている。それも口に入れてかみ始めた瞬間から甘い。お米によっては、噛んでいくうちに甘みが広がるものや逆に、あまり甘みやコクを主張しすぎないような味わいのものもあってどれがいいかは、食べる人の好みになるのですが、うちの母にとっては、甘みを全面に感じる「高木さんのコシヒカリ」が、とても好みだったようです。

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その高木さんの田圃の取材に行ったのは、ちょうど夏の時期。いつもは晴れオンナのわたしだけど、この日の富山は、今にも雨が降りそうな曇天。こりゃ、急いで向かわないと、仕事にならんがね。空港でレンタカーをピックアップし、高速をひた走ること、約1時間少々。車はのんびりした田舎町に到着し、まずは高木さんに挨拶。立ち話もなんだから、と案内された倉庫の中には、収穫したばかりの玉葱が山積され、その隙間には学習机用とおぼしきヨレヨレの椅子が2つ、放置してある。その椅子の埃を高木さんがタオルでぬぐい、より綺麗な方をわたしに薦めてくれた。座るとキコキコ音がして少々不安定ながらも、約30分ほど取材を行ったあと自慢の田圃に向かうことに。

しかしながら外にでると、空はますます鉛色。ま、まずい~。高木さん、急ぎましょう!
つづき。
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高木さんのコシヒカリ(16年度産)

投稿者 news : 2005年02月15日 | 2004年セコムの食取材日記 | コメント (0)

ある日のランチ(1)

 フランソワと別れてボーヌの中心街に向かったわたしたちは、12時を少しまわったあたりで、街のお惣菜屋さんに立ち寄った。ショーケースの中には、フランスの食卓に欠かせない細切り人参の酢漬けや、でーんと丸ごとおかれたチキンやほろほろ鶏、各種テリーヌ、パテ、牛肉の赤ワイン煮、コッコ・ヴァンなどが所狭しと並べられ、いかにも美味しそうな色彩を放っている。しかも格安。店の奥にあるイートインのテーブルをキープして、目を皿のようにしてケースの中を物色。
 ケースの前で約10分ほど延々と悩んだ末に、鴨のテリーヌとウサギの赤ワインソースに決定。食べ物をチョイスするときのわたしは、どうしてこんなに優柔不断なんだろうか。そして無事にコーディネーターを含む6名全員が注文を終え、しばし歓談や打ち合わせをして料理を待っていたのだが、待てども待てども一皿も出てこない。
 コーディネーター氏いわく、フランスは出てくるのが遅いんだそう。でもそれでも誰の前にもお皿が並ばず20分以上とは、せっかちな日本人にはもてあます時間。手持ち無沙汰でデジカメをいじり始めようかとしたところで、やっとこさの一皿目が登場。・・・したのはいいけれど、予想だにしなかったボリュームに一同びっくり。
 お皿の上にはテリーヌに添えて、大量の生野菜や付け合せのお惣菜が山盛りで運ばれてきた。時間がかかった理由はわかったし、とても丁寧な仕事ぶりなのもわかったけれど、どうやらフランス人の胃袋にはわたしは太刀打ちできないことも十分に理解した。メインのウサギをなんとか食べ終わったときには、かなりくたくたでございました。

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高木さんのコシヒカリ<その2>

高木さんのコシヒカリが育つ田圃は、世界遺産を擁する富山県五箇山系の伏流水が流れ込む、恵まれた土地。その地で育つコシヒカリは、ひと口めから甘くしっかりとした粘りが感じられる美味しいお米。

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そして、その田圃に案内してもらおうと高木さんの家を出たのはいいけれど、空は重い鉛色で、今にも雨が降りそう。急がなきゃ。高木さんとわたしを載せた軽トラは、いつも通っている人でなければ出せないようなスピードで、土手道をくいくいと蛇行し、あっという間に目的地に到着。「こっちが俺ので、そっちは他の人の田圃だ。こうやってみてみると違いがわかるやろう?」と言われ見比べてみると、確かに違う。他の田圃には草が生えてないのに、高木さんのところは草だらけ。それから、他のところの稲がかなり密集しているのに対し、高木さんのところは、稲と稲との間隔が広く、稲茎がかなり太い。例えていうなら、鶏の足と軍鶏の足。それくらい稲の太さが違う。高木さんは、無農薬減化学肥料で米を栽培していて、魚を発酵させて作る堆肥などを土の状態にあわせて鋤き込んでいくんだそうです。「無農薬栽培で何が一番大変かっていうと、次から次へと生えてくる草との戦いだよ~。だけどほら、あれだけうちの田圃に草が生えているけど雑草に負けない稲を作れば大して困りもしないんだ」人も稲もたくましく育てないと、いけないのでありますね。

ん!大変。稲に感心して、空のことを忘れていた。雨が降る前に高木さんの写真をフィルムに納めさせてもらわなければ。かくして、数枚の笑顔を撮り終え、取材は無事に終了。そしてそのあと30分ほどで、鉛色の空からはバケツを勢いよく蹴飛ばしてひっくり返したような極端な豪雨が、わたしのレンタカーを襲うことに。高木さんの笑顔の後ろに控えた曇天が、少しは伝わることと思います。このお米は、甘くて旨いっ!1粒たりとも、残すでないぞ。
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高木さんのコシヒカリ(16年度産)

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さとうきびの蜜<その1>

那覇での取材は「セコムの食」24号で新登場いたします『さとうきびの蜜』の取材。さとうきびの蜜って言われても、なんじゃろか?と思う方も多いと思います。黒糖は、さとうきびを破砕して汁を絞り、それを煮詰めていって、少しの石灰などを入れて固めたものですが、このさとうきびの蜜は、煮詰めて石灰を入れる前の蜜を、そのまま瓶に詰めたものなんです。だからホントに無添加の蜜。

生産者の仲宗根さんのところには、一度伺っているのですが、この商品の製造自体が1月~3月のみなので今回、あらためて取材に伺った次第。仲宗根さんは、自ら無農薬、無化学肥料でさとうきびを育て、それを自宅にある2つの釜を使って薪で炊いて煮詰めて、糖蜜を作っていらっしゃる方。

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黒糖の特産地、沖縄のなかでも、無農薬無化学肥料でさとうきびを育てているのは、皆無に等しいそうなんです。なぜなら、さとうきびの生産農家自体が高齢化を迎え、作業に手間暇をかけることができなくなっているからなんだそう。だけど、仲宗根さんは、自分の子供にも安心して食べさせられる黒糖を作りたいと、5年ほどまえからこのさとうきびの栽培に携わっていらっしゃいます。

最初に仲宗根さんに会って以来、わたしはこの蜜が大好きになり、この取材をとても楽しみにしていたんです。東京から2時間半ほどのフライトの先に現れた、エメラルドの海、そして都会と田舎が同居する街、那覇。空港でレンタカーをピックアップし、車を走らせること約30分。到着したのは、仲宗根さんのさとうきび畑。2m、高いものだと3m、4mにもなるというさとうきびの畑のなかから、仲宗根さんが、ひょっこりと純朴な笑顔で出迎えてくれました。

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収穫時期を迎えたさとうきびは、茎の下の方からナタで切り落とし、それから茎を包んでいる、長くすーっと伸びたススキのような葉を全て専用の鎌できれいに落としていくんです。この作業、一見簡単なように見えるのですが、実際はさとうきびの茎はかなり重く、また、幾重にも重なっている葉に抵抗されて、するりと外していくのはとっても大変。わたしも手伝いたいのはヤマヤマなんだけど、邪魔であること間違いないのでとりあえず、カメラ片手にその作業を写真に収めていく。さとうきび100キロに対して、採れる蜜は10キロくらいだと聞くと、なおさらその作業が、大変に思えてくるんですよね。

さとうきびの収穫は、朝から日が暮れるまで続けられ、トラックに大量に積み込まれたさとうきびは、明日の朝から搾りはじめてあの、美味しい蜜にするとのことで、この日はここでおしまい。そして、次の日の朝、わたしは生まれて初めての絶品の一杯に出会うことに!いや~、感動的にうまかったです!
つづき。
<仲宗根さん>のこだわりを余すことなくご紹介
こだわり倶楽部

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さとうきびの蜜<その2>

沖縄、那覇での取材2日目。朝食もそこそこにレンタカーに乗り込み、カーナビを頼りにさとうきびの蜜の生産者である、仲宗根さんの元に向かいます。住宅街のなかの一角にある仲宗根さんの自宅は、沖縄らしい白壁の造りで、奥の工房にはさとうきびの搾汁器と手作りの石釜が二つ並んでいます。

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仲宗根さんは、すでにさとうきびの搾汁に着手していて、さとうきびの茎を搾汁器の中に通している最中。搾汁器のローラーの下に据えた容器には、ペチャンコになったさとうきびから搾り出された汁がどんどんと溜まっているのですが、その色は、少し乳白色を帯びた淡い緑色。さとうきびの茎と似た色です。

へぇ~、さとうきびの汁ってこんな色なんだ~、と感心していると取材で同行した、いかにも沖縄顔の、もしこの人と東京で会ったとしても間違いなく沖縄出身と判断できるような、濃くて人懐っこい笑顔のカメラマンから、質問を受けました。『さとうきびを噛んだことある?』ないですぅ、、、。と答えると、目の前でさとうきびの茎を膝をつかってパキッと折ってくれて、差し出され、『こうやるんだよ』といって<沖縄的さとうきびの味わい方>を指南してくれました。

まずは、奥歯を使って(前歯は折れる可能性があるので避けるべし)細い竹のようにやたらと堅い皮をバリバリと剥いでいく。バリバリとですね、、、といって、わたしもやってみたけれど、かっ、硬いっ。冗談でしょ?というくらい硬いっす。ホントにこれがスタンダードな味わい方なんスか?沖縄の子供たちはお腹がすいたら、畑からさとうきびを少し拝借して、これをかじっておやつがわりにしていると言われたけど、ホントに子供の頃からこんなことしていたら、歯も強くなりますがね。

そして、やっとの思いで中から現われいでたのは、さとうきびの汁をたっぷり含んだ芯の白い部分。お~、やっと辿り着いたよ~、と白い部分を噛んだのですが、、、!それはもう、わたしのこれまでの人生のなかでこんなに美しい甘味があったのだろうか?と思うほど、清らかな甘み!まいった、まいった。沖縄の子供たちがうらやましいよ。こんなのおやつにしているなんて、幸せすぎる。

生のさとうきびの美味しさに対し、近来稀に見る感動を覚えたわたしに仲宗根さんが、にっこりと笑いながら『搾りたてだよ』とコップに入れて渡してくれたのは、さっき見た搾汁器に搾り出されたいわば、一番搾り。飲んでみると、ほんのりと若竹のような溌剌とした香りのなかに、南国の果物に共通するゆったりと濃厚で、酸味を伴わない圧倒的な甘みが限りなく上品かつ大量に口の中に広がっていく。

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こんなに自然でやさしい甘さがあったなんて、知らなんだなぁ。とても甘いといわれているスイカの糖度が13度程度なのに対し仲宗根さんのさとうきびの汁の糖度は20度。この汁から黒糖ができるわけだから、甘いのは当たり前なんだけどそれにしても、まったくカドのない甘さは感動的。そして、このさとうきびの汁に牛乳を入れて飲んだときの美味しさったら、腰を45度に折ってお礼を申し述べたいほど。

すると、さきほどの沖縄在住のカメラマンが「だけど、ここのさとうきびは、他のとこのよりもずっと甘いね」という。ほう~、そうなのか、とその場では思ってみたもののそう言われれば実際に食べ比べしてみないと気がすまないのはもはや職業病。そこで、仲宗根さんとこの取材を終えて、他の取材先でも同じようにさとうきびをかじらせてもらいました。いや、ホントにそうだった。さとうきびなら全て美味しいのではなく、仲宗根さんが育てているさとうきびだから、それも一年で一番糖度が高まるこの時期だからこそこんなに美味しいのでありました。

このさとうきびの搾り汁は、手作りの石釜で薪を焚いてじっくりじっくりと約半日をかけて炊き上げます。そして出来上がったのが、このさときびの蜜。しっかりと土作りをした畑で育てた、無農薬無化学肥料栽培のさとうきびから生まれた、清らかで豊潤でコクのある蜜は、他の甘味とは、一線を画す傑作です。

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ドメーヌ・ベルトー

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まさに絵に書いたような職人登場

 10月20日午後。シャンボール・ ミュジニー地区を走る国道を逸れ、細い道を何度か折れた先に見えてきたのがドメーヌ・ベルトーの自宅兼ワイン蔵だ。オレンジにペインティングされた背の高い門扉をくぐると、見事なまでに育ったもみの樹がある。最初に姿を現したのは、御年70歳を越えるピエール・ベルトー。上背はなくやや前かがみでまったく笑顔を見せず視線はまっすぐ。眉間には深く刻まれた皺とぎゅっと結ばれた口元。しかしながら機嫌が悪いわけではなく、必要なことは早口でボソッとつぶやく、まさに絵に書いたような頑固職人だ。

笑顔で登場、フランソワ
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 早速、試飲をさせてもらうべく地下の蔵へと移動。蔵には多数の225リットル入りの木樽、そして大樽が二つ並んでいる。この言葉の通じない職人相手にどう取材をはじめようかと思っていたところに息子のフランソワ・ベルトーがやってきた。彼の方は、いたって物腰がやわらかく父と違って社交的だ。この蔵ではぶどうの栽培をフランソワが、醸造は7代目当主のピエールが中心に行なっている。肥料には魚糟や腐食土などを使用し、畑に必要以上の負担を与えないようにしているが、最近流行のビオディナミは、世間の風潮にのった俗っぽさを父が嫌うのだという。

ワインの哲学を問う
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 ピエールに自身の哲学を聞いてみた。「この繊細なぶどうが実る土地の個性を生かすために、タンニンが前面に出過ぎないように注意している。そのために新樽は使わず、果汁を搾るときは茎をすべて外して果実だけを使うんだ」。シャンボルミュジニーはピエール自身が優雅な女性をイメージして醸造したもので洗練された果実味を持ちそれでいて十分なコクがある。対して、ボンヌ・マールは筋骨隆々のパワフルな男性の印象。どこまでも力強く、早飲みするときにはデカンタに移して飲むほうが良く、長熟により本来兼ね備えた実力が発揮できるタイプ。そのボンヌ・マールのぶどう畑に案内してもらうことになり、ここで父・ベルトーとはお別れ。名残り惜しい。

贅沢ゆえに生まれる味わい

 畑はとても丁寧に手入れされている様子が伝わってくると同時に、積み残したぶどうがとても目に付く。聞くと、この蔵では収穫は一度だけで、そのときに熟してなかったぶどうはそのまま放っておくのだという。二度摘みをすると収穫量は増えるけど、一番摘みにこだわるがゆえに、生まれてくるコクを大切にしているのだ。贅沢すぎる味わいの秘密はここに残されたぶどうたちが雄弁に語っているようだ。

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ドメーヌ ベルトー シャンボールミュジニー2000
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鳴門漁師のわかめ<その1>

ここは「セコムの食」夏号カタログの撮影スタジオ。今回は、これまでにご紹介している商品も何品か撮影しています。どれもいつ食べても美味しーい!

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そうこうしてると、あれ~っ?スタジオがなんだか磯っぽいぞ~? キッチンの方に近づいてみると、そこにはこの若布が!袋の中では、細っこい針金のようにしているんだけど、たーっぷりの水で戻して、海にいたときの脹らみを取り戻した若布はその辺の“へなちょこ昆布”なんか圧倒しそうなほどの、威風堂々たる風貌。そして、間近に海があるような磯の香りを発している。

たかが若布、なんてナメちゃいけないよ。だって、この若布はね、あの、とてつもない渦潮で有名な鳴門の海でがっちりと骨太に育ったツワモノ。お味噌汁のなかでフヨフヨとしているだけの、存在感のないお坊ちゃま育ちの若布と比べたりしちゃ、この若布にちょっと失礼かも。

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この若布が獲れるのは、四国に温かい風が吹き始める2003年の春。SARSが中国、四国地方を席巻する最中、わたしはこの若布の取材のため、鳴門海峡が臨める若布の干場に立っておりました。

この若布の生産者である村さんは、鳴門の漁師さん。180cmくらいはあろうかという巨漢で頭は丸坊主。最初にお会いしたときには、思わず”海坊主!”と思ってしまいました。しかしながらその容姿に反して、村さんは限りなく温厚で鳴門の海をこよなく愛する、生粋の漁師。

村 『わたしはね、本業は漁師なんですよ。ゆうてみたら若布つくりは趣味なんですわぁ。だけどね、趣味やゆうても、手を抜くということじゃじゃないんですぅ。趣味やからこそ、できることもあるんじゃないかと思うんです。』
『生計のこととか余計なことを一切考えんと、昔ながらの製法にこだわったり、じっくりと納得がいくまで熟成させたりね。いろんな考え方があると思うけど、わたしは鳴門の若布が大好きでね、その美味しさを、きちんとわかってもらいたいんよね。この若布をやっている理由は、それだけなんよね』

と、穏やかな口調で話してくれた。なるほど!では、もう少し詳しく、村さんの若布つくりについて、教えてくださいませんか?
つづき。
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鳴門漁師のわかめ<その2>

鳴門の海を心から愛する漁師、村公一さんが育てる若布は、強くたくましく、歯ごたえ抜群の一級品。先日行われたカタログの撮影でも、その存在感はオカシラ付きの鯛とも堂々と肩を並べるほど。撮影が終わった後、わたしたちスタッフは残った商品をできるだけ持って帰るようにしているのですが、(愛すべき商品を捨てるなんて、間違ってもできない!)今回の一番人気だったのが、なにを隠そう、この若布だったんです。だってね、乾燥若布だから保存は利くし、軽いし、なにしろ旨い!この若布をお味噌汁なんかにいれたら、もうその他の具がなりを潜めてしまうくらいの存在感。酢の物にしようものなら、その実力を如何なく発揮して、旦那さんに『おい、この若布、どうしたんだ?旨いじゃないか』と誉められること間違いなしの、他の追随を許さない実力派。

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では、その若布はどのように作られているのか?
まず、一番大事なこととして、間違いなく鳴門で育った若布だということ。海外産のものを、同地でパックしなおして『鳴門産』と銘打ったもの(結構多いのです)ではなく正真正銘、鳴門の荒波にもまれた、雄々しき若布は、色も味も違うんです。

次に、村さんのこだわりとして、鳴門に昔から伝わる『灰干し』の製法を取り入れているということ。灰干しとは、収穫した若布に灰をまぶすことによって熟成を促し旨みを凝縮させ、より一層力強い歯ごたえにするためのもの。ただし、現在では灰の使用が法律で禁止されているので、その代わりに炭の粉を使って、製法はそのままに美味しい若布を作っているんです。

2003年の春に村さんを訪ねたときには、炭をたっぷりとまとった若布が太陽の光をたっぷり受けながら、浜辺で気持ちよさそうに寝そべっていました。ある程度乾燥させた若布は、順番に熟成用のハウスに移され、村さんが『よし、いいぞ』というまでカリッカリに身を締めていくのですが、若布を扱うときの村さんの手は、魚を扱うときと同様、ホントに優しい。この人は、ホントに鳴門の魚や若布を愛しているんだなぁと思います。『若布は趣味でやってるんですぅ』という村さんの言葉を証明するように、熟成を終えて出荷するときの検品も、人任せにせず村さん自身が行います。検品に立ち会ったときのこと。

いの 「えーっ、こんな立派なのも、はじくんですか?」
村 「あぁ、そうなんですぅ。ほら、これここに色ムラあるでしょう?」
いの 「いや、言われればなんとなく。でもこれ、ホントーにはじくの?」
村 「そうですわ。いやね、普通は出すんと思いますけど、これを出すのは、なんかね、私が納得せんのですわ。」
へぇ~。まいりました。頭が下がります。この若布、わたしたちが誠心誠意、ご紹介させていただきますね。ホントに旨いですよ、この若布。溢れんばかりの磯の香りと、他の若布では味わえないほどの食感。絶対おすすめです!
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越前十割おろしそば

2003年12月。この日は大好きな北陸への出張なので、いつも以上に準備万端。朝のニュースによると多少天気が悪そうだけど、なぁなんとかなるでしょ。約1時間の空の旅を終えて、到着したのは小松空港。レンタカーをピックアップして、すぐに高速へGO。向かうのは、福井県今立町。

快適に車を走らせながら、ふとCDからラジオに切り替えるとラジオのお姉さんが、午後から天気が崩れそうだという。おやおや、ちょっと急ぐかな、、、と思った矢先、、、。ガジャガジャバリバリ、バリバリバリーンという音に車が包囲された!な、なんや~。崖くずれか?いや違う~。ぎゃー、ヒョウやん!バケツをひっくり返したようなヒョウが、天から車を襲ってる~。こんなんじゃスピードを上げるどころか、自分の命が危ういわ。恐る恐る減速し、ハンドルを取られないよう必死の形相で超前かがみの肩こり運転。なにしろ前が見えんのです。シャレになっとらんがね。それでも、やっとこさで辿り着いたころには、ヒョウが雪に変わり、これ以上降り積もらないことを祈って、取材先の暖簾をくぐる。

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命がけで、辿り着いたのは気鋭の職人がいる蕎麦屋さん。そば粉十割で打つ手打ちそばでございます。店主の永見さんは、蕎麦好きが高じて8年前に蕎麦屋を開いた方で、温厚な笑顔とちょっとふっくらめの腕からくりだされる蕎麦は越前蕎麦らしく太めで、喉越しというよりは口の中で味わって食べたくなるタイプ。十割蕎麦にしたのは、そば粉本来の味わいを活かしたいと思ったからで使用する粉は100%地元福井県産のもの。石臼でゆっくりと挽いたものを使います。

朱色がまぶしい漆塗りの大きな器のなかに投入されたそば粉は少しずつ水を加えながら、しっかりと捏ねていきます。最初パラパラとしていたものが、だんだん形をなしてきて、丸い球形にしたあとは、のべ棒でしっかりと伸していき最後に包丁で太めに切り揃えていく。

わたしの「食べたいなぁ」波動が伝わったのか、「打ちたて、食べますか?」「はいっ。よろこんで」場所を打ち場からお店のほうに移し、待つこと数分。運ばれてきたのは、蕎麦の上にたっぷりと大根おろしがのったぶっかけそば。口に含むと、蕎麦粉がもつ大地の風味がいっぱいに広がり十割蕎麦ならではの重厚感と大根の辛味、さらにはかつお節の風味がきりっと締まったダシと相まって、もうわたくし大満足。ここで「日本酒、燗で」といえないのが、なんとも辛いけど、人間なにごとも我慢が大切。

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この十割蕎麦のすごいところはね、自宅でもちゃんと茹でられるところ。普通、十割そばは茹でるのがとても難しいので、慣れない人が茹でると、バラバラにちぎれてしまうことが良くあるんです。でもこの十割蕎麦は、添付のレシピに沿って茹でれば、このわたくしでもちゃんと茹でられてしまうのです。すごい!そのうえ辛味の効いた大根と醤油がきっちりと効いたダシもついて、至れり尽くせりとはこの蕎麦のこと。

充実した取材に意気揚々と店の外に出た私が見たのはレンタカーのうえに降り積もる、30cm以上もの積雪。え。 (・_・) わたし、どうやって帰ればいいのさ~?!。心の底から途方に暮れた取材でした。
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越前そば 3食セット
越前そば 6食セット

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シャヴィー・シュエ


犬と共にお出迎え

 10月22日早朝。秋の朝日を浴びて黄金色に輝くムルソー村の畑の一角。当主の名が刻まれた石門をくぐり、広い庭に車を停める。真新しい大きな破砕機の隙間から駆け寄ってきたのはシャヴィー・シュエ、ではなく愛犬の不細工な犬。あまりに不細工すぎて抱きしめたくなるほどかわいい。そして次に現れたのがシャヴィー・シュエ。シュエは一目で開放的な性格とわかるような良く動く大きな目と俊敏な動きで私達一同と握手を交わしたあと、「さぁ、じゃ、すぐに行こう!」と敷地内の蔵に案内してくれた。

右脳が納得!のワイン
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 段差の低い階段を下りていくと、大量の湿気が蔵の中を覆い、室温も高い。今年収穫したワインを樽の中で発酵させているからだ。樽に耳を近づけてみるとプツ、プツとワインの息吹が聞こえてくる。まずは発酵中のものを試飲させてもらった。ワインとジュースの中間のような、しかしながら力強い味わいだ。そして本番。見慣れたエチケット(ラベル)が貼られたビンから注がれたムルソー、さらにピュリニーモンラッシェ。しっかりと効いた樽、スパッとシャープな酸味、十分な果実味。左脳ではなく右脳が美味いというワインだ。

美味しいと言われるために作りつづける

私は冬号カタログを手渡して、通訳にシュエの紹介文を直訳してくれるようにお願いした。そのなかの一文で無名ながらも素晴らしい作り手という内容に対して、シュエがこう言った。「俺は有名になりたいんじゃない。自分が作ったワインを美味しいと飲んでもらえればそれでいい。シャルドネは白ブドウの王様だと思うし、特にこの土地(ムルソー)は世界一の白ワインを生み出すことができる地力がある。だからそれをきちんとワインに表現してあげるだけさ」いや、まったくそのとおり。

力強い土壌が生み出す真っ直ぐなワイン
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 それから徒歩にてシュエのムルソーの畑を取材。粘土質と石灰質が入り混じった畑。太陽の光を受け、黄金色に輝いているぶどうの葉に触れるシュエの姿からは、心からこの土地とワインを愛しているのが伝わってくる。裏表がない、シュエの性格そのままのまっすぐな味わいの白ワイン。少しでも多くの人に楽しんでもらいたい。

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シャヴィー・シュエ ブルゴーニュブラン2001
シャヴィー・シュエ ムルソー2001
シャヴィー・シュエ ピュリニーモンラッシェ2001

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ある日のランチ(2)

わたしたち以外全員・・・

 今日のお昼は、この旅のなかでもかなり楽しみにしていた駅前食堂の定食。間違ってもツーリストは立ち寄らない、いわゆる肉体労働者向けの店。わたしたち以外は全員、あきらかに肉体労働者。女性は基本的に来ない店らしい。当然目立つ。そのうえビデオを回し、日本語で喋っているからより一層目立つ。大丈夫、気にしない性格だし。
 各テーブルには無造作に赤ワインの入ったピッチャーと水が置かれている。グラスに注いで飲んでみるが、濃くて渋い南のワイン。昼間からこんなワインを飲んで彼らは仕事ができるのかと、ちらりと横目でオヤジたちをのぞき込むと、みんな水で半分くらいに薄めて飲んでいる。街角の食堂での流儀を一つ、学んだ。
 肝心のメニューは、生野菜たっぷりの前菜に、チキンのグリル。付け合せのホワイトソースで合えたパスタは大きな銀色のお皿に盛られたものがテーブルにデンと置かれ好きなだけ自分のお皿に取っていく。チキンとパスタ。動物性たんぱく質と炭水化物。まさに午後の労働のエネルギーになるものばかり。意外なほどによく切れる、使い込まれたナイフで一口大にチキンをカットし、食べる。華やかさはないけど、飽きない。長続きするお店の味だ。
 メインのあとに当然のようにテーブルに置かれたのはチーズ。そのあとにはデザート。街角食堂でもいわゆるフルコースがでてくるのだ。さすが、美食の国、フランス。思わぬところで異国の文化に感動してしまった。
 愉快なランチを終え10ユーロを支払い。次のアポイントまで30分。ここいらで運動不足を解消せねばと、しばしお散歩。冷やりと乾燥した風がダウンジャケットの上をなでていく。この旅で唯一、ボーっとできた時間だった。


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江口氏の鰻<その1>

「セコムの食」には、たくさんの職人肌系頑固オヤジがおりまして、キャラクターはそれぞれ違うんですが、みーんながみんな、個性が強い。そのなかでも、濃すぎるくらい濃いキャラクターと他人様には真似できない匠の技で、周囲を圧倒してしまうのが鰻職人の江口さん。

カタログやWebで紹介されている写真をみると頑固一徹、男は無駄口たたかず、、という印象だと思うんですが、まったく、もう。よく喋るんだ、これが。

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とーっても人が良くて、腰が低くてわたしも大好きなんですけどね、鰻の話となると、もーーーっ、ちょっと立ち寄って5分で切り上げるつもりが、2時間くらい延々と喋る続けるんですわ。取材する前から噂には聞いていたけど、実際に会ってみるといや~、止まらない止まらない。帰りの飛行機に、危うく乗り遅れそうになりましたもん。

川魚問屋を営んでいる江口さんは、20年以上鰻と携わっていて、そのこだわりは、ただ焼くときだけではなくその仕入れ、さらには鰻の品種にまで徹底しているんです。そして、取材するわたしにまで、とんでもないこだわりが発生することに、、。ん~、あれは忘れもしない、初めて江口さんのお店を訪ねたときのこと。

早朝、東京-福岡便に飛び乗り、目的地の柳川に向け地下鉄とJRを駆使し、江口さんのお店に辿り着いたのは、お昼前後。お店の前には、鰻を焼く煙と香ばしい匂いが立ち込め、その奥から白髪混じりの江口さんが登場。魚屋さんでよくみかける胸まで覆うビニール製の白くてでかいエプロンをして、まさに仕事の真っ最中といった風貌で、出迎えてくれました。

とりあえずは名刺を渡して挨拶を交わし、立ったままもナンですからと、奥の事務所に通していただきました。そして、これまでの職人人生や鰻の仕入れや捌き方、焼き方についてみっちりとみっちりと、みっちーりと取材。ひとしきりお話を伺ったあと、、、といっても話が止まらないのでこちらから促して、 (^^; 加工の方を見せていただくことにしました。

場所を江口さんが厳選した鰻を「たてこんで」いる桶の前に移し、さて、ではお願いします。とカメラを構えるわたしに江口さんから、ある命題が。それを聞いたわたしは、身体が後方に3歩あとずさり、ご、ご勘弁を~!なんと「セコムの食」を担当して以来、最大のピンチに!!
つづき。
p_eguchi_unagi_02_figure_01.jpg商品のご購入はこちらから!
江口氏のうなぎセイロ蒸し2食セット
江口氏のうなぎセイロ蒸し3食セット
江口氏のうなぎの笹めし
江口氏のうなぎ蒲焼き
江口氏のうなぎ白焼き

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マルク・ジャンボン その1

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まさにコートドール!

 散策を終え車に戻り、ドメーヌ・マルク・ジャンボンに向かう。かなり急な坂道の上にあり、自宅と蔵は歩いて1分ほど離れている。ジャンボンの蔵からは、マコンのぶどう畑を一望でき、夕暮れともなると黄色く色づいたぶどうの葉がオレンジ色の陽の光を浴びて、幻想的な風景が臨める。
 1、2年前に出来たばかりという醸造所は、とても清潔でステンレスタンクがまだ新しい輝きを残している。この蔵は斜面を利用して半地下のような形に設計されているため、収穫時したぶどうをタンクの上に方に持ち上げて(ポンピング)する必要がなく、蔵の天井にあたる部分からタンクの中に流し込むことができる、このポンピングの作業はぶどうにとても大きなダメージを与えるといわれているため、そのストレスを与えないで醸造することができるのは、この蔵の大きなメリットだ。また、別の部屋には、白ワインを抱えた木樽が清潔なコンクリートの部屋のなかに横たわっていた。

行く、行く!もちろん行く!

 場所を変え、ジャンボンの自宅でのテイスティング。家も出来たててとりわけキッチンが美しい。愛らしいタイルや調度品がセンス良く並べられている。ぶどうの収穫時には、このキッチンで収穫を手伝ってくれる人たちに、連日美味しいお料理やワインを振舞っているのだという。来年、君たちもどうか?と誘われた。全員、来る気マンマン。
 ジャンボンは、その年のぶどうの個性を生かしたワインを目指している。その一つの手段として発酵には天然酵母を使用する。自分が手がけるワインは、若いうちに飲んでも熟成を経てからでも美味しくなければならないという。比較的カジュアルラインの白ワインには樹齢の若い木から取れたぶどうを80%、クラシックと呼ぶ、より繊細な味わいのワインには若木率を20%に落として複雑な味わいを与えるようにしている。


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ドメーヌ マルク・ジャンボン辛口2002
ドメーヌ マルク・ジャンボン遅摘み甘口2002

投稿者 news : 2005年02月15日 | フランスセコムの食取材日記 | コメント (0)

江口氏の鰻<その2>

柳川の鰻職人、江口さんの取材。いろんな話を伺って、では、実際に鰻を捌くところを見せていただくことに。すると、江口さんからお題が。

江口 『じゃぁ、今から捌いて美味しい鰻を食べさせてやるけんね』
いの 『はーいっ』(^.^)
江口 『じゃぁ、この桶のなかから食べたい鰻を選んで、こっちの桶に移して』
いの 『え?』
江口 『そりゃぁ当たり前やろ。自分が食べるもんくらい扱わんと。桶に移すくらいは、してもらわんとね』
いの 『あの、、わたし食べるのは大好きですけど、ち、ちょっと、、』
江口 『でも、あんた売るんやろ、鰻。でも鰻は触れんとかいうたら食べられる鰻に失礼やろ』
いの 『で、でも、わたし蛇とか、テレビに出ただけでチャンネル変えるくらい嫌いで、、、』
江口 『そげんとは、理由にならん。はい、こうして触るんよ』
いの 『えーーーっ。む、むりですぅぅぅ。』

p_eguchi_unagi_02_03.jpgわたくしですね、世の中で爬虫類ほど嫌いなものがなくて、爬虫類ではないものの、似たような容姿の鰻を、それもこの場で触ることになろうとは思ってもみなかっただけに、心臓が飛び出るかというほどの大騒ぎ。しかしながら、これでわたしが鰻を桶に移すことができなかったら江口さんの性格からして「おたくにゃ、出さんよ」と言われかねない。
やりましたよ、わたし。もう、死ぬ思いで。『ぎゃー、うわぁー。ヌルヌルやん。むりやー。できん~。なにー?手を筒のように?こうですか?できんよ~、もう』相当な大声を上げながらも、なんとか捌くための桶にプリプリに太った鰻を、放り投げるように移しました。

いの『入れましたよぅ、もう~。入れましたっ!!いいですか?これで。いいですかぁ?』

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すると、江口さんが『よっしゃ』とばかりに鰻をあっという間に捌いて、灼熱の備長炭の上に、ドン。鰻は800℃にもなるというウバメ樫の備長炭の上に敷かれた網のうえに乗せられ、一度、くっと頭を上げます。これは、イキのいい鰻でないと上がらないそうで、その後ゆっくりと頭を垂れ備長炭のうえに、ポトポトと自身の脂を削ぎ落としていくわけです。そして、脂が落ちた備長炭からはジュワっという音とそこから発生する燻し香が、食欲をそそる香りとして還元され美味なる協奏曲が奏でられるわけです。

江口さんが鰻を焼くときの香りの高さは、圧倒的なパワーを持ちその辺の鰻屋では感じられないほどの、香ばしくも厚みのある匂いに江口さんの鰻という食材に対するこだわりの高さを実感。一見、焦げてるようで焦げてない。なんの変哲もないようでいて、口にすると鰻の旨さを徹底的に表現している。

そして、艱難辛苦の末に辿り着いた鰻の白焼きの味は、白くつややかな身が口の中で、ふんわりと華やかに広がり不必要な脂をバッサリと削ぎ落とした結果残った、豊潤なコクが重厚感を持って広がる。こんなにウマイ鰻は、そんじょそこらでは食べられませんて。食通であればあるほど、この美味しさに感動するはず。マジメに旨いです!
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江口氏のうなぎセイロ蒸し2食セット
江口氏のうなぎセイロ蒸し3食セット
江口氏のうなぎの笹めし
江口氏のうなぎ蒲焼き
江口氏のうなぎ白焼き

投稿者 news : 2005年02月15日 | 2004年セコムの食取材日記 | コメント (0)

マルク・ジャンボンその2

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予想以上に美味

 そしてお待ちかねのテイスティング。ジャンボンのワインは、とろりとつやのある果実味と丸みを帯びた酸がピタリと融合した味わい。一口目のインパクトは穏やかなるものの、飲みすすむうちに芯に秘めた実力がゆっくりと開花していく。いつ飲んでも肩の凝らないワインというのは、このようなワインを指すのかもしれない。
 2002年はきりりとした酸が印象的だが、1999年はやや酸が控えめ。鶏のクリーム煮などには最適だよ、とジャンボン。次に、甘口のワインを試飲することとなる。なかでもシャンボンの貴腐ワインは、シャルドネ種を使って作る稀少なもので、非常にクリアでうっとりするほどの甘味を蓄えている。

ますますやる気マンマン!

 川のそばにある急な斜面にある畑は、ボトリティス菌がつきやすい環境だが、30度という傾斜は人が作業するにはあまりにも急な勾配だ。機械どころか人が手を加えることを嫌っているかのような畑での収穫は手馴れた人間でも通常の数倍の時間を費やしての作業となる。朝2時間、午後から2時間の作業を終えたあとは、足腰が立たなくなるほどの疲労に覆われるという。先ほど、収穫の手伝いに来るとはいったものの、そんな話を聞いてこの時点で“事前脱落”するものが出るかなと思いきや、全員、ますます来る気マンマン。さすが、全員もれなくワインをこよなく愛する面々なのであります。貴腐ワインを満喫した一同は、とろりとした気分に浸りながらジャンボンの家をあとにする。

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投稿者 news : 2005年02月15日 | フランスセコムの食取材日記 | コメント (0)

ちりめん山椒<その1>

子供の頃は、香りや味にクセのある野菜がキライだったという方、結構多いのではないでしょうか?わたしは子供の頃、ミョウガが苦手だったんです。親戚のオジサンのおうちに行くと、決まってミョウガ入りのお味噌汁がでてきて、そのたびお子様向けに作ってくれていたうちの母親の味噌汁ってやっぱり美味しいなぁと思っていました。

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だけど、このちりめん山椒の生産者の方は子供の頃から山椒の実が大好きだったそうなんです。『噛んだ瞬間にパァッと広がる、抜けるようなあの山椒の辛さがね、大好きだったんですぅ』(京都弁)と話す中西迪子さんは、元々は京都の呉服問屋の女将さんでした。ご挨拶廻りなどにお得意さんや身内の方に自分が大好きな実山椒がたーっぷりと使ったちりめん山椒をお配りしていたところ、それがやたらと評判が良くて、とうとうお店まで構えてしまったというもの。たしかに、京都に数あるちりめん山椒のお店のなかにあっても格段に美味しいと思うし、大好きな味。

ただ、趣味が高じて始めたお店って、商売にしたときに往々にしてある程度のところで原料や調味料の質を落としたりしがちなんですよね。でもね、中西さんはわたしが取材に伺っていろいろ話をするなかで、そんなにこだわったカタログならばと、原価を下げるどころか原材料の質を上げてさらに美味しいものを提供してくれたありがたい生産者なんです。

京都市内の少し奥まった一角にある「こと路」は、とても小ぢんまりとした清楚なお店。中西さんは、やわらかいトーンの声で、笑うと目じりが優しくてうーんと年下のわたしがいうのも変だけど、すっごく愛らしい方。当たり前だけど、着物がとっても似合うんです。うらやましい。 

お店の奥にすすむと、少々狭めの厨房にガスコンロが4、5口。その上には、大きなアルミの鍋がかけてあり、沸騰したダシが細かい泡を噴きながら、おじゃこが飛び込んでくるのを今か今かと待っている。「じゃ、見ててくださいね」と予め準備していたおじゃこをさらりと投入し、おおきなしゃもじでサクサクと、まるで寿司飯をきるように掻き混ぜていく。すると狭い厨房のなかは、醤油の香ばしさとミリンのつやっぽい香りでいっぱいになり、鍋の水分が飛ぶにつれて鍋の中のおじゃこが色づいていく。そして、水分がある程度とんだところで、輝きを放つ色鮮やかな実山椒を、えっ、そんなに?というくらい混ぜ込むのです。「これくらい入れないと、山椒の華やかさがでらんのやないかと思ってねぇ」とのこと。確かに、できたものを味わってみると、山椒の存在感がひときわ輝いている。

でもね、ただ大量に山椒をいれればいいってもんじゃない。量だけではなく、もっと細かーいところにまで手をかけているからこそこんなに美味しいものが出来たんです。その、好きじゃなきゃできない「手のかけ方」って?
つづき。
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ちりめん山椒 小セット
ちりめん山椒 大セット

投稿者 news : 2005年02月15日 | 2004年セコムの食取材日記 | コメント (0)

ちりめん山椒<その2>

お惣菜の工場にあるような大釜ではなく、自宅にもあるくらいのお鍋でクツクツと炊き上げる、女将さんのちりめん山椒。山椒がピリッと効いて、噛むたびにおじゃこの旨みが口にふわっと広がってとても美味しいんです。しかし、その美味しさの影には、食べる側にはなかなか伝わらない、細かな努力があるんでございます。

京都『こと路』を取材しているときのこと。女将の中西さんに炊き上がったちりめん山椒を試食させていただいたあと、商品に使用している原材料をみせていただくことに。九州産と書かれた箱のなかから、テーブルに広げられたおじゃこは小振りで、よく見るとキュッと身が締まっている。「ここのおじゃこはね、しっかりと乾燥してあるんですぅ。それにね、うちに送ってくるときにちゃんと検品してくれて悪いのは随分とはじいてくれているんですけどね」「でも、それでもほらな、こうして切れてるものも中にはあるから、それは、うちらで全部取り除いてるんですぅ」といいながら、中西さんは眼鏡をかけて小さなおじゃこの中から身が切れているものなどを、丁寧にはじきだしている。

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また、たっぷりと使う山椒は、旬の時期に大量に仕入れたものを冷凍しておいて、順繰りに使っていきます。その際、口に入ったときに実についた茎の部分が食味を邪魔しないよう茎を残さないよう丁寧にひとつひとつ、プチン